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馬主・徳石さん:競馬のロマンを語る
2008年3月28日

親元を離れてレースへ
サラブレッドの運命「すべては勝つために」


母馬にぴったりと寄り添う子馬



競馬のロマンを語る徳石さん

 かつて競走馬として活躍した母馬のお腹の
中で11カ月間過ごし、生まれてくる子馬た
ち。速く走り勝つことを宿命付けられたサラ
ブレッドが、この世に生を受ける。その後、
厳しい調教を経てデビューするが、栄光をつ
かむ馬もあれば、怪我をして一度もレースに
出られないまま去って行く馬もいる。アメリ
カで数少ない日本人馬主の1人である徳石安
男さんが、それぞれのストーリーを持つ競走
馬の誕生から調教、レース出場、引退後の生
活までのロマンを語る。
(文・写真=永田 潤)

 

 競争馬は、物音1つしないのどかな牧場で誕生する。そこでの静寂さと
は打って変わり将来、レーストラックを疾走し観衆の大歓声を浴びること
を幼い子馬は知る由もない。

 馬は、生まれてすぐに立ち上がり歩き出す。それからずっと母馬にぴっ
たりと寄り添い、甘え、愛情をいっぱいに受ける。乳を飲み、草を食べ、
風光明媚な牧場でのびのびと育つ。

 あどけない子馬だが、親元を離れレースで勝たなければならない運命を
背負っているサラブレッド。母馬から走り方や危険回避など「生きるため
の基礎」を学習。最も辛いのは、母と子の別れ。母馬はいなくなったわが
子を、必死になって探し回るという。

 大リーグのスカウトが野球場を回るように、牧場巡りをし子馬に目を光
らせ、「青田買い」するバイヤーも珍しくはない。バイヤーには目利きが
いて生まれてすぐに買い付け、中には最高峰のG1レースで勝たせた「名
伯楽」もいるという。

 成長した馬は生後1歳2、3カ月で母馬と離れ、レース出場に向けたト
レーニング・ファームに移る。そこではまず、騎手が騎乗するための鞍付
け、マスク、手綱を付けられるが、嫌がる馬が多い。次に歩行訓練を受
け、頭を上げない姿勢に矯正。歩行は人件費削減のため、電動式装置に導
かれ毎朝約1時間たっぷり汗をかく。

 その後、本番と同じ大きさのトラックに出てギャロップを重ね、足腰を
強化。徐々に距離を8分の1マイル、4分の1マイル、半マイルなどと伸
ばし、最終コーナーでの全力疾走へ。単走から2頭、3頭、4頭などと並
走に移り、追い込みを体で覚え闘争心を習得。2歳になった頃にデビュー
する。

徳石さん:10頭のオーナーが目標
毎週どこかで所有馬が出走を

 徳石さんは現在二頭の馬のオーナー。ヘルムスゴールド(雌、5歳)と
グローバルインスピレーション(雌、2歳)。

 ヘルムスゴールドの父ヘルムスマンは、日系ジョッキー、コーリー・ナ
カタニが騎乗しG1レース「ブリーダーズ・カップ」で勝った優駿の血を
引く。しかし、軟骨が遊離する脚の故障で、相場の5万ドルから大幅に値
引きされ1万ドルで売りに出されていた。

 10戦し2勝しただけの馬だったが、徳石さんは購入を決断。手術に成
功したヘルムスゴールドは、水中歩行訓練などリハビリが実り脚は完治し
た。手術、入院、調教などの諸費用に1万ドル、購入費を含め2万ドルか
かったが、「もらったようなもの。安い」と、徳石さんはトレードを喜
ぶ。

 復活を期すヘルムスゴールドは現在、ハリウッドパークで4月の復帰戦
に向け調教を受けている。サンタアニータ競馬場でレースに復帰する予定
で、実戦から約6カ月間遠ざかっているのが不安だが、他の馬に比べ「飛
ぶように跳ね、勝つ予感がする」(徳石さん)と仕上がりは順調だ。

 グローバルインスピレーションは、昨年1歳時に購入。今秋デビュー予
定の期待の馬。「勝ってほしい」という徳石さんの言葉には力がこもる。
賞金を基に新馬を購入する予定。

 この馬を買い取ったのは、昨年9月、生産馬として早期に引退させたも
のの不妊症に悩まされた所有馬ナウチカル・ミーティングの苦い経験があ
ったためで、「走る馬がほしい」というものだった。ナウチカル・ミーテ
ィングと金銭5000ドルを払い手に入れた。

 「競馬はビジネスでやっている」という徳石さん。子を産ませて良馬の
購入資金にするつもりだったが、不妊症の馬を持った不幸から「走らせて
儲ける方が性に合っている」と、方針を変えた。

 ちなみに、種付け料は各契約内容によって異なるが、一般に3000か
ら5000ドル、いい馬になれば7500ドル。G1勝利馬ともなれば、
5万から10万ドルに上り、ケンタッキーダービーに勝った馬は25万ド
ルにも達するという。

 徳石さんの昨年の所有馬は1頭で、今年は2頭。来年3頭というよう
に、毎年1頭ずつ増やすのが目標。昨年掲げた目標「10年間で10頭所
有」を目指し、「毎週、全米のどこかの競馬場で自分の馬が走っているよ
うにしたい」。

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