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音楽の散歩道
楽譜は音楽の共通言語
2008年6月7日

おがわ・ひろこ

小川弘子

神戸大学教育学部音楽科卒。同
大学院修士課程修了。専門はピ
アノ。歌曲、オペラアリアなど
声楽の伴奏を得意とする。97年
に渡米し教会、コミュニティー
団体などで伴奏している。

 世界中の民族音楽には、固有の楽譜をもつもの
や、楽譜は存在せずに口承で伝えられているもの
などがありますが、それらはその文化や文字、伝
統を知らなければ習得するのが非常に難しく、と
くに固有の文字譜(文字で書き表された楽譜)は
理解するだけでも多大な時間を要します。それに
ひきかえ、世界中に普及している、いわゆる「楽
譜」は、一定のあまり複雑ではない決まりを覚え
てしまうと、誰でも読みやすい、理解しやすいと
いうのが特徴であり、だからこそ、国や文化を超
えて広く用いられているのです。では、この「楽
譜」、正しく言うと五線譜はいつ、どのように生
まれたのでしょうか。

 他のすべてのことと同様、五線譜も突然できた
わけではなく、それまでには試行錯誤の長い歴史
がありました。古代ギリシアの時代から、文字の
組み合わせによって音の高さを表したり、すぐ前
の音との高さ関係、すなわち音の上がり下がりの
具合を記号で表したりということは、記録に残っ
ています。ただ、これらの場合、基準となる音が
どんなものかがはっきりとしないため、音の高さ

(音高)を正確に判読することはできません。そのことを解決するため
に、十世紀頃から譜線が使われ始めました。譜線とは、現代の五線譜の原
型となるべきもので、当時は五線ではなく四線でした。これによって、音
と音の間隔に一定の基準が示され、音高がより正確に示されるようになり
ましたが、音の長さ(音価)についてはまだ、手付かずの状態でした。

 十三世紀中ごろになってようやく、音符の形によって音の長さ(音価)
を表すという記譜法が始まります。この段階では、長い音ロンガは短い音
プレヴィスの三倍の長さだというだけです。それでも、この考え方が生ま
れたということが非常に大事で、現代使われている音符もその形によって
音価が示されているのですから、十三世紀の考え方がそのまま二十一世紀
にまで継続されているわけです。当時の音符はすべて黒塗りの四角で表さ
れ、その後、黒い輪郭の中を白抜きにした四角ばかりを使用した時期もあ
り、次第にそれらを組み合わせてより細かく音価を表すようになりまし
た。

 四線譜が五線譜になった理由、四角だった音符が丸くなった理由は、は
っきりとはわかりませんが、より見やすく読みやすく書きやすく、改良さ
れていった結果だと思われます。いまのスタイルの五線譜が完成したのは
十七世紀で、十八世紀には他の記譜法が廃れていきました。これはちょう
ど、ピアノが発明され改良されていった時期と重なります。このことは単
なる偶然ではなく、五線譜がピアノをはじめとする西洋の鍵盤音楽を表し
やすいように形成されたからなのです。ですから、その他の地域のその他
の音楽様式に対しては万能ではありません。日本の伝統音楽も、五線譜で
表しきれるものではありません。それでも、やはり世界中でこれだけ普及
している記譜法は他にはありません。音楽の世界での共通言語、それが五
線譜なのです。

 

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