夢を持ち、演じ続ける
里見浩太朗さん
サンディエゴで俳優人生を語る
2008年6月13日

里見浩太朗 1936年、静岡県出
身。56年に「東映第三期ニュー
フェイス」として芸能界入り。映画
「天狗街道」でデビュー。代表作は
「水戸黄門」(佐々木助三郎役と5
代目黄門役)「長七郎江戸日記」
「忠臣蔵」「風林火山」「あぐり」
など多数。舞台、歌手活動も行って
いる。趣味はゴルフと水墨画
時代劇トップスターとして、数々の映画、テレビドラマ、舞台などで活
躍する里見浩太朗さん。日本の国民的時代劇である「水戸黄門」で黄門役
を演じていることはあまりにも有名。その里見さんが、これまでの俳優人
生や趣味、心掛けていること、水戸黄門の裏話など、休暇先のサンディエ
ゴの晴れた青空のもとで存分に語った。
里見さんはサンディエゴに別荘があり、23年ほど前から年に3回、少
ない時でも年に1度は滞在している。この5月も約3週間にわたり、気の
置けない友人たちと趣味のゴルフをしたり、ラスベガスでショーを見たり
して過ごした。滞在中は仕事を一切せず、リラックス。
趣味のゴルフの腕前は相当なものだが、ゴルフは「健康のため」。ゴル
フ以外で健康のためにしていることは特にない。職業柄、緊張を強いられ
る場面が多いが、できるだけストレスをためないようにしているとのこ
と。「ストレスをためないためには、何事も楽しむことが大切」というの
が持論。ちなみに、食べ物はなんでもよく食べるが、お酒は下戸。
38年続く水戸黄門
長寿は「分かりやすさ」
日本では水戸黄門の第38部(放送開始から38年目)が現在放送中。
ドラマ自体は6カ月、撮影は8カ月間という長丁場。毎週月曜日から金曜
日まで撮影が入っており、1話(1時間)を撮影するのに約1週間を費や
す。時間帯はその時々によるが、朝早くから夜遅くまで撮影が続くことも
多く、朝8時頃からロケーションに出て夕方まで撮影し、夜からはセット
で、という日も。
黄門役は、東野英治郎さん、西村晃さん、佐野浅夫さん、石坂浩二さん
に次いで5代目。水戸黄門が長く続く理由を、里見さんは「分かりやす
さ」だと考える。途中から見ても分かるような話の展開、そして「勧善懲
悪」。「偉大なるマンネリ」ともいわれる水戸黄門だが、「殺伐とした現
代社会において、人情、愛情、夫婦愛、隣人愛など、物語を通して思い出
してもらえたら」と願っている。
ちなみに、黄門といえば、毎回物語の終盤に必ず登場する徳川家の葵の
紋の入った「印籠」。4年前から輪島塗の人間国宝が作った印籠を使い、
家紋には金が施されているそうだが、ドラマでは最初から印籠が使用され
ていたわけではない。たまたま話の流れで印籠を見せたのが定着したもの
で、「最初は黄門自らが印籠を見せていた」という裏話もある。
黄門役を演じる上で、なるべく今まで通りの黄門でありつつも、自分の
個性を見せるようにしている。また、「強い黄門」を目指しているが、
「枯れた味を出すのはなかなか難しい。映りが若いと言われるので、なる
べく早く枯れた黄門さまになりたい」。しかし、「若い時から一緒にやっ
ているスタッフたちに『おじいさん姿の里見を撮りたくない』と拒否され
てしまう」。
通常のドラマや舞台は「本読み」(演じる前に、出演者同士で脚本を読
み合うこと)が行われるが、水戸黄門ではそれは一切行われず、各々で脚
本を読み、撮影に入る。
約2週間前に脚本をもらい、1つの話を撮影しながら、次の話の脚本を
読み進めるというハードスケジュール。
また、役者は「待つのも仕事」。撮影時に太陽が出ず、1日中バスの中
で待っていたこともある。「役者になってから、気が長くなった」と笑う。
役者には「撮影後、役からすんなりと抜けることの出来る人」と「撮影
後も役からなかなか抜け出せない人」がいるが、里見さんは後者。だから
こそ、ゴルフなどをしてリフレッシュする時間が必要なのだという。
台本通り感じたままに
自分に酔わず、良い演技
初めは歌手になるために静岡から上京したが、「東映第3期ニューフェ
イス」に決まり、芸能界へ。現代劇(東京)か時代劇(京都)の選択をす
ることになり、好きだった「時代劇」を選び、今に至る。また、「給料が
安すぎて東京では生活出来なかったが、京都なら独身寮があったから」と
いう意外な理由も。
最初は城下町の通行人や籠かき役から始まり、いくつかの役を経て、映
画「金獅子紋ゆくところ」で初主演を果たす。この時は嬉しかったが、主
演になるまでが早かったため、周囲からは応援だけでなく、妬みなどもあ
ったという。
演技をする際は、「計算せず、台本で感じた通りのことを、そのままの
気持ちで演じる」ことを心掛けている。「作りすぎたり、感動させような
どとは一切考えない。自分に酔っていては、よい演技は出来ない」。
今までで1番印象に残っている役柄は、「忠臣蔵」で演じた大石内蔵
助。今後演じてみたい役は意外なことに「特になし」。「人から与えられ
た役を一生懸命演じることが大切」だとし、「その方が楽しいし、自分で
決めるよりも、周りの判断の方が正しい」というのが理由。「東映ニュー
フェイスにも知らない間に知人が応募していて、受けてみたら受かった。
周囲の人に動かしてもらって今までやってこれたので、そのように生きる
のが自分に合っていると思う」と謙虚。
俳優を長く続けている理由を問うと、「演じることが好きだから」 と即
答。自分の過去の作品をあえて見直すことはない。「自分の演技に納得が
いかなくてもやり直すことは出来ないし、過去の作品を懐かしんでいては
前進しない」。
長年、第一線で走り続けてきた里見さん。今回のサンディエゴ滞在も十
分に楽しんだとのこと。真摯(しんし)に演技を追求し、「夢を持たなけ
れば演技は出来ない」と語る名優は、夢を持ち、人に夢を与え、さらに前
進していくことだろう。(塩屋あずさ) |