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音楽の散歩道
「たなばたさま」を巡って
2008年7月3日

おがわ・ひろこ

小川弘子

神戸大学教育学部音楽科卒。同
大学院修士課程修了。専門はピ
アノ。歌曲、オペラアリアなど
声楽の伴奏を得意とする。97年
に渡米し教会、コミュニティー
団体などで伴奏している。

笹の葉さらさら 軒端に揺れる
お星様きらきら 金銀砂子
五色の短冊 私が書いた
お星様きらきら 空から見てる   
「たなばたさま」
  権藤花代、林柳波 作詞
       下総一 作曲

 最後に七夕の行事をしたのはいつのことだった
でしょうか。よく考えてみると、小学校の低学年
の頃かもしれません。短冊に願い事を書いたり、
こよりを作ったり、色紙で飾りを折ったりしたの
は、遠い楽しい記憶です。どこからともなく先生
が大きな笹を用意してきてくださり、みんなで飾
り付けをしながら、この歌を口ずさんだもので
す。ところが、今になってこの歌詞をよく見てみ
ると、文部省唱歌の特徴というべきか、意外とよ
くわからないことがいくつもあることに気づくの
です

 

 まず単純に言葉の意味から見てみましょう。〈軒端〉は〈のきば〉と歌
っていただけではわかりませんでしたが、漢字で書いてみると一目瞭然で
す。〈砂子〉は広辞苑によると、「①すな。まさご。②金銀箔の粉末で、
蒔絵または画面・短冊・色紙・襖絵などに吹き付けるもの」とあります。
この場合は、空いっぱいに輝く星が、まるで金銀砂子のように見えるとい
う比喩的表現でしょうか。〈5色〉とは、中国古来の思想からくるもの
で、緑、赤、黄、白、黒の5つの色を表します。何でもいいから5種類の
色、というわけではありません。

 では、なぜ笹の葉なのか? はっきりしたことはわかっていませんが、
天照大神が天の岩戸にこもってしまった時、技芸の神である天鈿女命(あ
めのうずめのみこと)が笹の葉を手に持って踊ったと、「古事記」や「日
本書紀」に書いてあるほど、古くから笹というのは神聖なものと考えられ
ていたことが無関係ではないと思われます。実際に笹を七夕に用いるよう
になったのは江戸時代のことで、紙の短冊もその頃からのようです。それ
までは、梶の葉の裏に和歌を書いていたそうです。その際に、里芋の葉に
たまった露で墨をすると、字が上達するといわれていました。

 なぜ、「七夕」と書いて「たなばた」と読むかを簡単に言うと、古くか
ら伝わる「棚機女(たなばたつめ)」という機織り女性の伝説と、中国か
ら来た牽牛星、織女星の年に一度の逢瀬のお話がうまく交じり合い、旧暦
7月7日の夕方がこの行事のクライマックスに当たることから、漢字と読
みをあてはめたということです。ちなみに「しちせき」ともいいます。こ
ちらの方が納得の読み方ですね。

 同じ日に、京都の北野天満宮では、御手洗祭(みたらしさい)という菅
原道真にちなんだお祭りが行われ、みたらし団子をお供えすることから、
七夕の日にこのお団子を食べる風習があるそうです。次回、七夕のお飾り
をするときには、願い事をしながら「たなばたさま」を歌うだけでなく、
みたらし団子も食べましょう。菅公のように文芸が上達するかもしれませ
ん。

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