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坂東眞理子さんLA講演会:
「品格は人生を豊かに」
愛することで社会は変わる


2008年9月19日


講演する坂東眞理子さん

 累計300万部を売り上げ、ベストセラーとなった「女性の品格」の著
書で知られる坂東眞理子さんのロサンゼル講演会「なぜ、いま『品格』が
求められるのか」が8月31日、レドンドビーチのパフォーミング・アー
ツセンターで催された。会場に集まった約1200人の老若男女を前に坂
東さんは、「社会における女性の存在」について歴史を追って説明すると
ともに、引きこもりやモンスターペアレンツ、また連日発生する殺人事件
など、現代の日本の社会問題を取り上げ、「傷つきやすい人が増えてい
る」と指摘。教養や品格を身につけることで、他人の痛みが分かり、人生
を豊かにすることができると訴えた。

女性を取り巻く環境

 坂東さんによると、日本は昔、多くが農業や漁業を営んでおり、女性は
仕事を手伝いながら家事や育児もこなしよく働いたため、「女性の存在は
社会で重視されていた」という。しかし、中国から儒教が入ってきてか
ら、徐々に男尊女卑の傾向が強まり、高度経済成長で男性の職業が商業か
ら都心でのサラリーマンに変化したため、女性は「仕事」を失い、「男性
は一生職場」「女性は家庭を守る」という方程式が確立された。そのた
め、当時働く女性が6割いたのに比べ、現在は5割まで落ち込んだと説明
した。

 1980年代後半からバブル景気が訪れ、85年に男女雇用機会均等法
が成立(その後97年、06年と改正)、少子化や高齢化、労働力減少の
危機を察し、日本は育児休暇制度の充実や保育所への補助金増額など、働
く女性のサポートを開始した。坂東さんは、「日本の育児補助制度は米国
よりはるかに進んでいる」と強調、それだけ日本の社会が女性の労働力を
必要としている証だと述べた。

 しかし制度の充実とは裏腹に、日本における女性の社会進出は緩やか
で、特に管理職に就く女性の数は4割、取締役レベルでは0.7%足らず
と、世界でも大幅に遅れを取っているという。

 その理由として、「女性の社会進出に社会や会社が対応できていない」
と指摘。「男性社会に女性が入ることにより、職場のルールに変化が必
要」だといい、さまざまな人種や文化、宗教が入り交じる欧米を例に上
げ、「同質の中に異質が入ることで社会が伸びる」「異質な人とぶつかり
合い、新しい発見が生まれる」と訴えた。

 また女性に対しても、「無理をして男性と肩を並べるのでなく、女性ら
しさを生かして活躍する必要がある」「女性らしい品格を持ち、人間とし
て社会から必要とされるようになってもらいたい」と、アドバイスした。

異質な人と触れ合う

 坂東さんはまた、連日日本で発生している痛ましい事件についてもコメ
ント。「いつの時代、どの社会でも、犯罪を犯す人はいた。問題は、マジ
ョリティーの人がどうかということ」と指摘。現在の日本は、「そのマジ
ョリティーの中に、引きこもりやモンスターペアレンツ(学校に対し自己
中心的で理不尽な要求を繰り返す保護者)、モンスターペイシェント(医
療従事者や医療機関に対し理不尽な要求を繰り返したり、暴言や暴力を振
るう患者やその保護者)といった人が増えていることが問題」と述べた。

 なぜ自己中心的な人が増えたのかについて、戦前日本は、個人を公のた
めの手段にすることが乏しかったため、反動で近年は個性を大切に、子供
たちの創造性を発揮させようと努力した。しかし、「高い目標を達成させ
るためには、安全、調和といった基礎をきちんとしなければならなかった
のが、基礎は二の次となり、個性発揮に焦点を置きすぎ、現在の社会現象
が起こった」と解説。基礎を見直すべきと忠告した。

 また、「他人を思いやる気持ち」や「人に気を遣う心」といった日本人
の良さが、現代の若者に十分伝わっていないと述べ、「自分が持っている
物は当たり前で、持っていないものに文句をつける傾向にある」と警鐘を
鳴らすとともに、人生を「オン」「オフ」で考える若者が増え、些細なこ
とで傷つきやすくなっているとも指摘。「失敗したらそれを土台にもう1
度やり直すという力が失われつつある」と、現代の問題に危機感を募らせ
た。

 親の役割として、子供とのコミュニケーションを重視すべきといい、若
者は、「日本を出て、異質な人と触れ合う経験が必要」と、広い意味での
教養、また社会の共通の知識を身につけることが重要だとした。

人間としての品格

 また坂東さんは、「伝統文化・芸能は、直接社会での生活に役立たない
と思っている人が多いが、小説や俳句などに触れることにより、自分と違
う考えを持つ人を理解できるようになる」とし、判断の幅が広がり、人生
を豊かにすると話した。

 また、「人間は与えれば与えるほど与えられ、愛すれば愛するほど愛さ
れる」と述べ、「他人の心は変えられない。変えられるのは自分と明日だ
け。そのためには自分自身に力をつけ、強い人間になることで、困ってい
る人に手を差し伸べることができる」とまとめた。

 日系社会を例に上げ、「日系人の多くが、第2次大戦時に442部隊に
入隊し、米国社会に恩返ししたように、お世話になった社会にお礼をすべ
き。1人で大きくなったのではなく、社会のいろいろな恩恵を受け、今の
自分があることを理解してほしい」と、人間としての品格を持つことが重
要だと締めくくった。

 第2部は、元ロサンゼルス総領事館領事の海部優子さんとの対談が行わ
れ、働く女性として互いが歩んできた道などに触れ、日米の働く女性を取
り巻く環境の違いなどを話し合った。

 最後は、会場の人からの質疑応答にも応じ、働く女性からさまざまな質
問を受けた坂東さんは、「子供が親を必要としている時は仕事を軽くする
など、人生におけるギアチェンジが大事」などとアドバイスした。
(文・写真=中村良子)

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