東京学芸大学大学院で日本画を学ぶ半本藍さんの展覧会「時代、国境、文化を越えて―半本藍による日本画展」が7日から始まり、29日(土)までパサデナのシューメイ・ホールで開かれている。半本さんは昨年開かれた日本画院絵画展で「ロバート・クラウダー賞」を受賞し、奨学生として現在、米国研修を行っている。
ロバート・クラウダー基金は、LAを拠点に活動した日本画家の故ロバート・クラウダー氏(雅号、黒田正次)の遺志を受け継いだ弟子の棚野泰全さんが、若い芸術家と音楽家の支援を目的に2012年に設立した。日本画院と山人会主催「山梨県立美術館の両絵画展」で故人の名を冠した賞を贈るほか、LAで開かれる第九演奏会など音楽関係の支援を行っている。
クラウダー氏は1930年代に訪日し、日本の美しさに魅せられ東京で日本画を学んだ。日米開戦で捕虜となり43年に帰国し戦後、屏風絵や壁画を制作した。2002年に日米文化会館で屏風展を開催した。
半本さんは、日本画に使われる顔料の美しさに魅せられ、意欲的に制作活動を展開。人の心を癒し、心の平和をもたらすような作品を作り上げることによって世の中に貢献したいと願っている。今回の展示では、受賞作品「鎮樹の静寂」を含め自身の作品のほか、日本画院創設者でクラウダー氏の師匠の故望月春江氏の作品とクラウダー氏の屏風絵を展示する。
半本さんは、同賞の第1号の受賞者であり、先月末に来米し3カ月の研修はプログラムを自身で決める。クラウダー氏の生まれ故郷、イリノイ州べスニーの訪問を予定する。
同基金を主宰する棚野さんは、クラウダー賞を贈った研修生を毎年受け入れ、日本画院の絵画展を当地で開催する意向を示し「多くの人に日本画の美しさと、独特な技法を紹介し、日米の文化交流を図りたい」と述べている。
14日にレセプションが開かれ、日本画院から酒井重良、三浦裕二郎の両理事が参列する。同理事長の鈴木美江さん(春江氏の娘)は、クラウダー氏について「戦前の美しい日本を忘れることなく作品に描き続けた」と称賛し、「今このように『クラウダー賞』として、その絆が続き、若い芸術家の創作意欲につながればいい」と願う。
日本画展の入場は無料。月曜から土曜までの午前9時半から午後6時まで開催。