国民の日本語力が低下して日本はだめになるのではないか、と真剣に恐れている。次のいくつかの文を見ていただきたい。どの文も「かかり」と「むすび」の関係が幼稚なまでに危ういのだ。
 「だっこちゃんの新シリーズ。ピンク、青など7色あり、希望小売価格は税込み1050円」(朝日新聞) 「小沢氏はこれまでに3回特捜部の任意聴取を受けており、いずれも虚偽記載への関与を否定」(産経新聞) 「菅内閣として初めての関係閣僚協議が開かれ、内閣官房に情報を集約し、関係閣僚が連携を強化して問題の解決に当たることを確認しました」(NHK)
 「あり」「受けており」「開かれ」が明らかに文の論理性を壊している。それぞれ「ピンク、青など7色ある新製品の希望小売価格は——」「——任意聴取を受けているが、いずれも虚偽記載への関与を否定」「菅内閣は初めての関係閣僚協議を行い(開き)、——確認しました」とでもする方がよほどまともで、つながりがいい文になる。
 「米首都ワシントンに隣接し保守色の強いバージニア州のクチネリ司法長官が、警察官の職務質問の際に相手の滞在資格を確認する権限を与えるべきだとの州独自の見解を示し、米メディアは3日『バージニアが論争に参加』と報道、移民問題が11月の中間選挙の争点に急浮上する米国で注目を集めている」(共同)もひどい悪文だ。この書き方では第一に、バージニア州が保守的なのは首都ワシントンに隣接しているからだ、と捉えられかねない。つづく個所も論理的にしまりがなさすぎる。たとえば「——州独自の見解を示したことを受けて、米メディアが——と報道したことから、移民問題を11月の中間選挙の争点(の一つ)と見ていた全米の有権者がバージニア州の動きに強い関心を寄せ(始め)ている」の方がうんとすっきりしているはずだ。
 つながりが悪い文はつながりが悪い思考からしか生まれない。悪い文ばかりを書いていると、粗末な思考しかできなくなる。報道機関がこんな拙文で満足している日本の状況は危機的だと言えるほどに悪い。報道機関がよってたかって日本の知力を破壊しつづけている。【江口 敦】

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