世の中が不況と言われています。まわりを見ると景気の良さそうな話は、そう多くは聞かれません。話を聞いても、壮大な目標よりも目の前のハエを掃うためのノウハウが掲げられ、一見目先だけと思われる対策でその場を濁したりしています。それほど時代は難しくて分かりにくくなっているのかもしれません。
難しい局面にくると決まって評論家の様相をした方々が難しそうな表情で解説をします。これがまた事情を分かりにくくします。例えば経済や社会現象などにありがちな、過去の事例に従って予測や判断基準を伝えていくのです。そして昔はこうだったとつぶやき、昔あった事象と良く似た形なのであのようになるとか、以前こうした事が起こったときにはこのようなことで乗り切ったなどという説明をします。例を出せば出すほど理解者を増やすかもしれませんが、こういった予測が実際にはほとんど当てはまらなかったり、たいして意味のないものだったりします。
間違いの理由は、過去のものさしで世の中を測っていたからだと思われます。同じ現象でも、環境や考え方、時間などさまざまな要素が違えば、過去に起きたことと現在起きたことからは、違った結論が生み出されるのです。過去のものさしで物を見ることは、過去を振り返り懐かしむだけのことでしかなく、問題の解決にはなりません。解決は実にシンプルです。過去の物差しは捨てること。今の新しいものさしで見ることが、今を変えるコツだと思います。
特に齢(よわい)を重ねると過去にしがみつき、昔を美化しながら過ごすようになり、現代を憂うことが多くなります。自分がなかなか変えられないように、人はそれ以上に変わらないものです。それならばほんのすこしでも結構です。自分を変える方がすっきりと楽に生きていくことができます。【朝倉巨瑞】