「骨髄移植を特集する記事でインタビューを受けていた日系ドナーの骨髄を移植されたのは、この私なんです」—
 先日、オフィスに一本の電話がかかってきた。受話器から今にも飛び出してきそうなほどの明るい声は、約35年前に長野県からフロリダ州マイアミに移住した日本人女性だった。
 比較的健康だった2年前に突然、急性骨髄性白血病と診断され、2回の化学療法を経て昨年3月に骨髄移植を受けたという。
 「2010年6月24日のオンライン記事に、この日系男性ドナーと骨髄がマッチしたのは60代のアジア系女性ってありますよね。それ、私のことなんです。彼の骨髄のおかげで、私はこうやって今、元気に生きることができます。彼にひと言、どうしてもお礼が言いたいのです」
 アメリカでは、移植から1年が経ち、ドナーと患者両者が希望すれば互いに連絡を取ることができる。一方日本の場合、骨髄バンクの公平な運営と相互のプライバシー保護のため、ドナーと患者の面会は一切認められていない。しかし、互いの個人が特定されない形であれば、骨髄移植推進財団を通じた手紙の交換は可能という。
 この女性は、自身の「命の恩人」にひと言お礼を言いたいと、病院のコーディネーターからドナーの名前とメールアドレスをもらったが連絡がつかず、ドナーの名前をネットで検索したところ、彼のインタビューが掲載された羅府オンラインの記事を見つけたのだという。
 「記事には、彼がどうして骨髄移植のドナーになろうと思ったのか、またどのような過程で骨髄を提供したのかも書いてあり、彼の無私無欲の優しさに胸がいっぱいになりました」
 これがきっかけで、2人は連絡を取り合うことができたのだが、今更ながら、ネットの力に感心した。もしネットがなかったら、またもし、羅府新報がオンラインを開設していなかったら、この女性が自分の命を救ってくれたドナーに直接お礼を言える機会はなかったのかもしれない。【中村良子】

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