先日勤務先のオフィスビルで避難訓練が行われた。以前勤めていた高層ビルの避難訓練は予告なしに行われるので、電話中でも慌しく切って廊下に駆け出していた。20階以上とあって、さすがに地上ではなく途中の階で終了。参加者の名前を確認するとご褒美にアイスクリームが配られた。ぱりっとした格好のビジネスマンが中断された仕事よりもアイスクリームが溶けるのを心配して、われ先にエレベーターに駆け込む姿を見て微笑ましく思ったものだ。
 今回の避難訓練は事前に予告していたため、フロアにはほとんど人がいない。皆、用事を作って外出したようだ。訓練の意義は理解しているものの、小一時間オフィス外で手持ち無沙汰でいるのも時間の無駄のような気がして、しぶしぶ廊下に出ると同じような顔をした人が数人いる。別のオフィスの人がこっそり教えてくれた。「前回の避難訓練では机の下に隠れていた人が消防署の人に見つかってこっぴどく怒られたそうです」仕事を一時中断されるのは困るが、災害は突然発生する。この機会にと車が使えないことを想定して、歩きやすい靴、アウトドア用のジャケット、小銭、懐中電池、予備の電池、ラジオなどを点検した。
 備えあれば憂いなしといいたいところだが、最近の自然災害は被害の桁が違う。9月上旬に発生した台風12号が和歌山、奈良を襲った2週間後に、今度は台風15号が日本列島を縦断し猛威を振るっている。名古屋に住む知人はミクシィで「自宅が浸水して、救助の舟で脱出した」と緊迫した書き込みをしていた。22日時点での犠牲者15人。亡くなられた方、遺族の方を思うと心が痛む。東日本大震災の教訓を生かし、一人一人が防災意識を高め、できることから準備するという当たり前のことが大切なのかもしれない。【下井庸子】

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