高校を卒業したばかりの2人は、遺児支援団体「あしなが育英会」から奨学金を得、進学を果たした。同会が2014年、岩手、宮城、福島に完成を目指す震災遺児の心のケア施設「東北レインボーハウス」とそのサテライト(沿岸部4カ所)の建設資金を募るキャンペーンで来米した。
レースには、佐藤さんとともに青森、岩手、宮城、福島4県の高校、大学の陸上部員14人が参加する。7人の高校生が5キロラン、大学生8人はフルマラソンに出場し、「希」や「HELP」「遺児」などとプリントした揃いのTシャツを着用して走り、震災遺児の窮状を訴える。
募金運動では、育英会の活動の趣旨を記したティッシュペーパーとリストバンドそれぞれ1万個を配り協力を求める。同施設の建設、運営費は約35億円とされ、あと約18億円が必要だという。不足を補うため、世界4都市でキャンペーンを展開。今回は目標額を定めていないが、昨年6月に行ったニューヨークでの同様のキャンペーンでは、約5000万円を捻出した。
5キロラン参加の動機について佐藤さんは、同じ境遇だが成人するまで先の長い幼い震災遺児の成長を案じながら「(被災から立ち直り)元気でいることをアピールする気持ちで来た」と説明。レース本番へ向け「Tシャツに書かれた(希望やヘルプ、孤児の)意味することをアメリカ人にアピールできるように頑張りたい」と力走を誓った。
佐藤さんはまた、津波で生じた山積み状態のがれきの処理問題を報道と現状が一致しないと指摘。受け入れに非協力的な自治体が多いと嘆き「津波の映像が出るばかりで、現実とギャップがある。絆が本当に強いというのなら、手伝ってほしい。そうすれば楽になる」と意見を述べた。
父親を亡くしたことで1度は進学を断念した内村さんだったが、奨学金で救われ「あしながのお陰で進学できた。感謝の気持ちを伝えるために募金運動に参加した」と話した。レースには出ずにブースでボランティアをし「沿道からランナーを応援して、募金活動を知ってもらい」と抱負を述べた。
同キャンペーンの詳細は田中さんまで、電話424・442・9091。【永田潤、写真も】