大学の卒業シーズンを迎え、多くの卒業生が将来の夢と希望を抱き社会に飛び出すことだろう。しかし、楽観できない要素がある。卒業生の多くが学生ローンを抱えているからだ。教育省の調べによると、今年の卒業生の90パーセント以上が学生ローンを抱えて卒業するという。
近年の不況で、州の財政逼迫(ひっぱく)により、公立大学の予算は大幅に削減され、深刻な影響を受けている。
大学の授業料上昇率はメディケアよりも高い伸びを示しており、加州でも年々高騰する授業料で多くの学生が苦しんでいる。家庭の経済事情などから学生ローンの申請は年々増えており、ついに1兆ドルを突破した。調査によると、学生一人あたりの平均負債額は2万4000ドルだが、私立大学では10万ドル以上のローンを抱える生徒もいるという。
学生ローンと住宅ローンの大きな違いは、住宅ローンはリファイナンス、最悪の場合差し押さえとなるが、学生ローンは借り換えなどが容易ではなく、全額払うまで逃げ道がない。たとえ就職しても、ひとたび失業すれば負債は雪だるま式に膨れ上がり、低いクレジットスコアが次の就職先を遠ざける。働いても出口が見えないラットレースの始まりだ。
とはいえ、高卒と比べ大卒は生涯にわたって65万ドルの賃金の差が生じるといわれている。授業料は将来の自分への投資と理解する学生も少なくない。賃金の格差もさることながら、大学は「考える力」を鍛える場所。さまざまなバックグラウンドのクラスメートや、教授に触れ合い、影響を受け、大きな糧になる。
住宅ローンやクレジットカードの負債には救済プログラムがあるのだから、学生ローンについても、もっと柔軟なプログラムが用意されるべきだ。オバマ大統領は議会に対して学生ローンの利率引上げを一年間延期する提案をしており、下院が修正しない限り、現在の金利の2倍となる6.8%に引き上げられる。社会人経験の少ない学生に多額の負債を負わせ、自己責任と突き放すにはあまりにも不公平だ。同時にファイナンシャルリテラシーについて、もっと教育する必要があるのではないか。【下井庸子】