米国に住むアジア系移民の数が初めてヒスパニック(中南米系)を上回ったことが19日、ピュー・リサーチ・センターの最新の調査結果で明らかになった。雇用主が高度なスキルをもつ従業員を求める一方で、不法移民の流入が減少傾向になったことが影響しているという。
最新の国勢調査のデータによると、2010年に米国に入国したアジア系移民の数は43万人で、全移民数の36%を占める。ヒスパニックは37万人で、31%だった。
07年の時点では、米国に入国したアジア系移民の数は39万人だったのに対し、ヒスパニックは54万人だったことから、5年前は圧倒的にヒスパニック移民の方が多かったことが分かる。
ピュー・リサーチ・センターの専門家によると、メキシコから国境を越えて米国に入国する不法移民の取り締まりを強化した2009年から不法移民の数は著しく減少。アジア系移民が台頭する転換期を迎えた。
一方、アジア系米国人の増加は著しく、米国の全人口のおよそ5・8%(1820万5898人)を占める。このうち74%が米国外で生まれ、米国の市民権を取得していくという。日系の米国外生まれは32%だった。
アジア系移民の中でもっとも多かったのが中国系で23・2%。次にフィリピン系が19・7%、インド系が18・4%と続いた。日系は7・5%で、ベトナム系、韓国系に次ぎ6番目だった。
インドや中国、韓国などからのアジア系移民の増加は、学士号を持ち特殊技能を持つ人、また米国のビジネスに少なくとも50万ドルの投資を希望している外国人を優遇してビザを発行する移民政策が、1990年代に始まったことも影響している。
特殊技能を持つ外国人に発給するH1Bビザの新たな取得者で、アジア系は4分の3を占め、このうち56%がインド系だった。
米国の大学で学ぶ留学生も、10人に6人がアジア系だ。彼らの中には卒業後も米国に住み、働くことができる人もいる。2010年には、米国生まれと他国生まれ両方を含むアジア系学生は、エンジニアリング博士号取得者のうちの45%、数学やコンピューターサイエンス博士号取得者の38%、物理科学の博士号取得者の33%を占めていた。
さらに近年では、25歳から64歳までのアジア系新移民の61%が大学(2年制大学を含む)を卒業しており、その率はその他の国からの移民と比べ2倍に達している。
学士号(4年制大学)以上の学歴のあるアジア系米国人は49%で、全米平均の28%を大きく上回っている。特にインド系は70%でもっとも多く、韓国系(53%)、中国系(51%)、フィリピン系(47%)に続き日系は46%で5番目だった。
また世帯収入の中央値は6万6000ドルで、他の人種や米国全体を大きく上回っている。10年のアジア系米国人の貧困率は11・9%だったが、出身国別に見ると、韓国系やベトナム系、中国系は米貧困率の12・8%より高かった。
アジア系の不法移民の多くは密入国やビザの期限が切れてもそのまま滞在しているケースが多く、米国にいるアジア系移民の最大15%が不法移民とみられているが、ヒスパニックの45%と比べるとはるかに少ない。
ピュー・リサーチ・センターは国勢調査のデータ分析をもとに、米国に住む3511人のアジア系成人に、今年1月3日から3月27日までの間、電話による聞き取り調査を実施した。