夏至から数えて11日目の頃から七夕の頃までを、半夏生と言います。
今ではどうかわかりませんが、田植えの時期は早すぎても遅すぎても良くなく、この半夏生の時期までに終わらせるのが好ましいと、昔から言われてきました。
この日には毒気が天から降ると言われ、その日に収穫したものを食べないという習慣や、農作業をしないという地区もあったからだそうです。
そして無事田植えが終わると、田の神に感謝したり、豊凶を占ったり、縁起のよいものを食べたりしたのです。
福井県の大野市では疲れを癒し、体力を十分に備えるために鯖を食べました。
奈良地方では小麦で餅を作って供え、それを食べる習慣がありますし、香川県ではうどんを食べる習慣があります。そして関西地区ではこの時期にタコを食べる習慣があります。
タコの吸盤のようにしっかり稲が根付くようにという願いからです。それだけではなく、タコには疲労回復に効くタウリンや亜鉛が多く含まれており、田植えの後の疲労回復に効果があると、昔の知恵があったのだと思われます。
関西にたこ焼き文化が発祥したのも、こういった日本的な文化継承があったからかもしれません。
このように私たちは、自然や天災と正面から闘ってきたわけではなく、自然のめぐみと共存して創造されたものを授かり、そして壊され揺さぶられながら、自然の一部分として生かされてきたはずです。しかしながらこのことをついに忘れてしまい、自然を統制し支配しようとする姿が見られます。
地球に存在しない物質をつくることも、自然の摂理に反することも、私たちの子供たちの未来に消えない毒気を残すことだと感じます。
今では忘れさられようとする日本の習慣でさえ次の世代に伝えていこうとする気持ちは、私たちが地球人として明るい未来を生き抜くための叡智(えいち)があるからだと思います。【朝倉巨瑞】