スーパーマンがアメリカで再び脚光を浴びている。
 「Superman : The High-Flying History of American Most Enduring Hero」という長ったらしいタイトルの本が好評だ。
 著者のラリー・タイ氏は数年にわたり、スーパーマンを追いかけてきた。その命題は、「スーパーマンはなぜいつの時代の人たちにも受けるのか」。スーパーマンを創った人、改良・進化させた人、映画やテレビで演じた人、そしてなによりも時代的背景。これがナゾ解きのカギとなる。
 スーパーマンが誕生した1938年、アメリカにはまだ大恐慌の後遺症が残っていた。街には失業者が溢れ、不況の風が吹き荒れていた。翌39年には第二次大戦が勃発、41年には日本軍による真珠湾攻撃で太平洋戦争の幕が切って落とされる。先の見えない、不安感がアメリカをすっぽりと包んでいた。
 スーパーマンを考案したのは、当時19歳だったジェリー・シーグル君。オハイオ州クリーブランドの自宅で入浴中に思いついた。
 戦時体制下で、不安定な日々を送るアメリカ人にとって、スーパーマンは士気を高めるための格好の材料になっていく。
 第二次大戦が終わり、日独に勝ったアメリカは、次なる敵・ソ連との対決の時代を迎える。スーパーマンの敵はいうまでもなく、ソ連のスターリンだった。
 スーパーマンの倫理観は、アメリカ国内で起こるもろもろの社会現象に影響を与える。スーパーマンは白人至上主義秘密結社「クー・クラックス・クラン」(KKK)を打ちのめした。人種差別撲滅への挑戦もその一つだった。
 長引く経済不況、高止まりのままの失業率。医療保険改革(オバマケア)、同性婚、不法移民とどれ一つとっても国論は二分され、アメリカの両極化が進んでいる。9・11以降、アメリカをすっぽり包んでいるある種の「閉塞感」。〈スーパーマンのような人物が現れてすべての難題を解決してくれないだろうか〉現実の生活を一瞬でも忘れてスカッとしたいアメリカ人の願望は今も昔も変わらない。【高濱 賛】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *