小中学生が野球教室でプロ野球選手から指導を受けているのをテレビで見たことがあるだろう。ほほえましい光景だ。
 憧れの選手と接することで「プロ野球選手になりたい」という大きな夢はいっそう膨らむ。
 だが、日本には高校生以上のアマチュアへの指導は、現役とプロ経験者は禁止する規定がある。
 プロに一度、所属すると、アマに戻ってプレーしたり、指導することが禁じられていた。規則上、自分の息子に対しても教えてはならない。おかしな話だ。その不条理な決まりの撤廃に向けて近年、プロ、アマの両者が歩み寄り、努力が実を結ぼうとしている。
 大学と社会人はこれまで、段階的に条件を緩和したものの高校は厳しく、監督就任には教員経験2年が必要。その高いハードルをこのほど高野連が見直し、研修制度で指導者の資格が得られる大幅な譲歩案が提示された。野球界発展にとって歴史的な年になるのは確かでうれしい。
 これまで、私は取材を通してプロアマ間の指導で日米の大きな差を見てきた。日本から高校球児がLAに遠征に年に1、2度来る。対戦する米国の高校チームには、プロ野球と大リーグをともに経験した長谷川滋利、大塚晶則の両氏が監督、コーチを務めているが、日本ではありえない。両氏は、日本から来た中学生には教えるが、高校生にはあいさつだけで、寂しく思っていた。近年中に両氏が、甲子園球児に教えるのが見られそうだ。
 お世話になった母校と野球に「恩返しを」という選手の思いは強い。また、プロで成功できなかった選手が、アマで指導者として再び野球で生きて行ける道も開ける。称賛の条件緩和だ。
 ただ、忘れてならないことがある。ソウル五輪銀メダリストの元ヤクルト古田氏が、プロ選手の五輪派遣が検討された時に「アマチュア選手の夢を奪いかねない」と懸念したが、その通りになってしまった。今後、プロ経験者がアマ球界に復帰すると、仕事を奪い合う可能性があり、アマの指導者が失職するなど弊害を及ぼす恐れがある。規則の整備を慎重に進め、野球界全体の発展につなげなければならない。【永田 潤】

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