経営の神様といわれた松下幸之助翁の言葉に「長所は短所、短所は長所」という名言がある。人の長所や短所というものは絶対的なものではないということだ。
松下翁は学歴がなかったこと、体が弱かったこと、貧乏であったこと、の三つが自分を大きく発展させた理由であると語ったという。
学歴がないから人の話を聞き、体が病弱だったから人に仕事を任せ、貧乏に育ったから感謝の気持ちが生まれたというわけだ。
また、数多い松下幸之助翁の語録には「好景気よし、不景気尚よし」というのもある。景気が良いときは新しいことはしづらいが、不景気になると思い切って斬新なアイデアを実行できるからという。まさにマイナス思考をプラス思考に変える言葉だ。
アメリカの発明王、トーマス・エジソンの研究家である弁護士のヘンリー・幸田さんの講演を聞いたことがある。
幸田さんによると、エジソンは小学校を3カ月で落ちこぼれ、それ以降は正規の学校教育は受けていないのだそうだ。「あなたは一体どうして、発明王になれたのですか?」と質問されたエジソンは次のように答えたという。「それは私が学校に行かなかったからです」と。
学校教育を受けていないのはマイナスのイメージのはずだ。ところがエジソンは「自分は正規の教育は受けていないから、むつかしい理論は苦手だ。そこで理屈抜きに実験した。
電球の発明にあたって、フィラメントの材料は1万回を超える実験をし、ようやく京都の竹にたどりつくことが出来たのだが、もし自分に教育があったら、試す前に理論で否定的な結論を下してしまっただろう」
また、幼少のころ事故で難聴になり、音がほとんど聞えなかったエジソンだからこそ「音は振動だ」と気がつき、蓄音機の発明につなげた。彼も世間でいうハンディキャップを見事にポジティブ思考につなげている。
「人間の長所は欠点があるということだ」、「欠点は常に裏から見た長所である」など、古今の名言もあり、欠点(短所)と仲良く付き合うことは、やさしいことではないが、挑戦する価値のあることではないだろうか。【河合将介】