参院選挙の在外投票が14日まで行われている。有権者の関心は年々高まってきてはいるものの、投票率は在外有権者全体の2%台と低迷。在外選挙人名簿に登録した人だけをみても投票率はやっと20%に。(昨年12月の衆院選)
日本を取り巻く国際環境が厳しさを増す中で、経済、外交、安全保障、震災からの復興、エネルギー問題などに加えて憲法改正手続きについても政党間の主張に大きな違いがみえる。
例えば、現行憲法を改正するためには衆参両院で議員の三分の二以上の賛成を得た後、国民投票で過半数の賛成が必要と定められている96条を、「両院で過半数の賛成」に発議要件を緩和しようというのが自民党などの主張。
どこで線引きを図るのが妥当なのか、何事も数字の問題はやさしいようで難題だ。試験で51点を取った学生が、半分以上の点数だからといって「優」がもらえるわけではないし、合格点とも言い難い。
また、このほど連邦最高裁が「結婚は男女間に限ると定めた婚姻擁護法は、法の下の平等に反し違憲」とした判断は、数字の上でも微妙。税金の配偶者控除や相続税などの優遇措置を受ける権利は、通常の夫婦と同じように同性婚カップルにも与えるべきだとしたが、9人の判事による5対4の僅少差。
連邦最高裁が下す判断は絶対的なもとなる決まりだ。そうだとしても、過半数を1人上回るだけで白か黒か正反対になるシステムは、銃規制や移民法、人工中絶といった国民生活や人間の尊厳にかかわるような微妙な問題で、はたして絶対的に正しい裁定と言い切れるのだろうか。
どこかで線引きをしなければ物事は先へ進まないことは理解しよう。多数決は民主主義の一要素だし、少数派の意見が多数派に取って代わることが可能なのも民主主義。
しかし、憲法解釈を最終的に国民の直接投票で決めるという仕組みがないアメリカでは、時の大統領によって指名されてきた9人の判事のうちの最低5人の判事の判断がすべて、と考えると不安も残るし、スッキリこない。
世論調査によると、同性愛に理解を示していても、いかつい男同士が抱擁キスしている姿に約50%の人が拒否感を持っている現実も無視できない。【石原 嵩】