日本チームは、エリートで固めた。来春の高校進学は「甲子園に出て優勝したい」と強豪校を志望し、将来は日本のプロ、大リーグを夢見る選手たちばかり。全体練習はわずか2回という急造チームながら、実力を発揮。オフシーズンのハンディを持つ米国を6―2、15―0、17―2、13―0で圧倒した。
過去、この親善試合に参加した選手の中でも、甲子園大会に出場した大阪桐蔭3年生の森友哉捕手(18歳以下W杯日本代表)と明徳義塾2年生の岸潤一郎投手は、昨夏は準決勝で、今夏は3回戦で対戦するなど、同選抜チームの実力の高さを物語っている。選手たちは野茂さんがかつて投げたドジャー球場を訪問した。フィールドで練習を見学し、憧れの大リーガーに会い「メジャー」という大きな夢を膨らませ、世界への視野を大きく広げた。
両国選手、多くを吸収
将来の国際舞台で生かす
主将の山本侑度捕手によると日本選手は、米国選手に初めて会ってまず、体格の違いに「大き過ぎてビビった」という。プレーでは米選手を評して「パワーがあって、スイングが速い。初球から積極的に振ってきて、思い切りがよかった」。投手については「変則フォームで、打つのが難しかった。ナチュラルに変化する直球が多かった」と日本にはいないタイプを多く経験した。米遠征全体については「日本と大きく環境が変わって、みんな慣れるのが大変だった。でも英語が分からないけど、通じればおもしろい。みんなが、すごくいい経験を持つことができた。学んだことをチームに帰ったら報告したい」と述べた。
先発1度を含む2試合で登板した藤本海斗投手は、積極的に打ちにくる打者への対応で「初球はストレートを狙われるので、変化球から入ろう」と山本捕手と話し合った。変化球は、カーブ、チェンジアップ、シュートの3つの球種を持つ。カーブを決め球とし、カウントを取る遅い球と、三振狙いの速い球を投げ分け、米打者を翻弄した。米打者の特徴を「2ストライクに追い込むと、思い切って大振りしてくると分かったので、ていねいに投げた」と振り返った。
クリス・リンカーン投手は、1試合に先発して3回を投げて9点を許し、試合までの準備期間の短さを悔いた。日本の打者について「とてもコンパクトに振り、鍛え抜かれた感じがした。シングルヒットを打って、打線をつなげていた」と実力を認めた。同投手は高校進学後はUCLA、そしてプロを目指しており「将来またいつか日本と対戦したい。今日の経験が生きると思う」と話した。
全試合に出たエリオット・レイン捕手は、日本の打者について「1番から9番までがコンタクトヒッターという感じで、球を捉えるのがうまかった」と高く評価。投手については「コントロールがよく、速球、変化球どちらも緩急をつけて投げ分けられたので、とても打ち辛かった」と語った。夕食を日本選手とともにし「言葉が分からないけど、同じ野球選手なので心がすぐに通い合った感じがした。日本選手は、われわれにリスペクトを持って接してくれてうれしかった」と述べた。
野茂さんと長谷川さん
国際試合の重要性を強調
2人は「海外での国際経験が、今でも生きている」と口を揃え、「若いうちにこういう経験を積むのが大事」と強調する。ともにアマチュア野球のレベルアップに力を入れており、野茂さんは日本で2003年に不況下で廃部した社会人チームに属した選手の受け皿となるクラブを創設し、現在は少年対象の野球教室も開いている。一方の長谷川さんは「技術的にも一番伸びる高校生が大事」とし、オレンジ郡で年齢別(16歳〜18歳)に高校生の3チームで選手を教える上に、「コーチをコーチする」(長谷川さん)というコーチの意識改革など、レベルの高い指導を施す。
長谷川さんは、野球を通した国際親善について「プレー以外でも日本とアメリカの子どもたちが一緒に食事をして話して交流することは、とてもいいこと」と大会の意義を強調する。今回の両国の選手には「日本の選手がアメリカに来て、アメリカの選手が日本に行ってプレーする時代なので、世界に目を向けて頑張ってほしい」とエールを送った。