山形の秋の花と言えばモッテノホカです。花といっても鑑賞するためのものではありません。食べるための花、食用菊です。花びらを食べる習慣が日本以外にもあるのかは詳しくありませんが、この時期の山形では、秋の味覚であるモッテノホカをはずすことはできません。実は菊はどれでも食べられるそうですが、山形で生産される食用菊の中でも、モッテノホカは、独特の風味としゃきしゃきとした歯ごたえで、親しまれています。
 モッテノホカは、正式には「延命楽(えんめいらく)」という名の食用菊の品種ですが、この一風変わった名前の由来は、「天皇の御紋である菊の花を食べるとはもってのほか」だとか、「もってのほか(思っていたよりもずっと)おいしい」といったことから由来しているといわれています。
 そういえば、刺身をパックで買ってくると、刺身のつまの横に黄色い菊が乗っかっていることを思い出します。これをつま菊と呼ぶそうで、最も最近はプラスチックの菊に似せたものが添えられていますが、本物の菊であったとしても口に入れたことはありませんでした。
 しかしながらモッテノホカは、刺身のつまにひとひらという地味な存在ではなく、赤紫色をした菊がメインの食材として大胆に出されます。食用菊は花びら(花弁)の部分を食べますが、モッテノホカの花びらは筒状になっているため、茹でても形が崩れず、しゃきしゃきとした歯ざわりが特徴です。サッと茹でた花びらを、和え物、おひたし、酢の物にしたり、そのまま、天ぷらや吸い物など、食べ方はさまざまなようで、茹でるときに酢を加え、歯ざわりを楽しむため、茹ですぎないのがコツだそうです。
 ちなみに、山形ではモッテノホカと呼びますが、長岡地区ではオモイノホカとも呼ばれているそうです。もし秋の味覚を探しに東北に行かれる方にはお勧めします。「もってのほか」とは思って食べてみたら、「おもいのほか」美味しかったと思われるかもしれません。【朝倉巨瑞】

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