講師のパックさん(中央右)から弾痕の特殊メイクを学ぶ生徒たち。右端が奈良さん
講師のパックさん(中央右)から弾痕の特殊メイクを学ぶ生徒たち。右端が奈良さん
 大分市の明日香美容文化専門学校の美容科で学ぶ男女11人の生徒が研修のため来米し22日からの3日間、トーレンスで美容とメイキャップの指導を受けた。エミー賞受賞者の奈良佳緒里さんとハリウッドの一線
血のりを作る堀彩佳さん
血のりを作る堀彩佳さん
で活躍する米国人のメイキャップアーティスト2人を講師に、基礎から実践に役立つ技術までを習い、貴重な経験を積み感性も磨いた。
 生徒は学校で2年間学んだ後、美容サロンやブライダル関係の仕事に就く。米研修は十数年前から始まり毎年、奈良さんを頼って訪れており、引率者の同校講師、柴﨑多恵子さんは「有名な先生に教わるのは、一生に1度のチャンスで、特殊な技術を学ぶことができ、世界を知り、グローバルに視野を広げるきっかけになる」と、その意義を説明する。
 講習は、ナチュラルメイクと特殊メイクの2種類で、最後に実技の試験を受け、全員が修了証書を手にした。生徒は皆、外国人のモデル、講師とも初の経験で、日本人と大きく異なる顔立ち、肌の色や英語での授業は新鮮だといい、メモを取りながら写真を撮ったり、質問をしたりと、1度しかないチャンスを逃すまいという意志が感じられた。
 ナチラルメイクでは、白人女優をモデルに奈良さんが模範メイクを披露した。奈良さんは、白人相手には、シャドウの使い方がポイントだとし「その人の顔の特徴をさらに目立たせることを心掛ければいい」とアドバイス。生徒は互いにメイクをし合う「相モデル」と呼ばれる練習方法で、早速習ったことを試した。特殊メイクは、刃物、銃などの傷に流血をつけたり、殴打によるあざ、やけど、ケロイドなどを学んだ。実際に自分の腕や手にメイクをし、見せ合っては「本物みたい」などと出来映えを評価し「難しいけど、思ったよりもうまくできた」という声が多く聞かれた。
生徒は、切り傷を本物のように見せるため工夫を重ねた
生徒は、切り傷を本物のように見せるため工夫を重ねた
 生徒の堀彩佳さんは「雑誌を見て、モデルをきれいにしてみたい」と憧れ、美容師とメイキャップアーティストを目指す。奈良さんがモデルに施したメイクを目にし「ほんの少し手を加えるだけで、全然違った感じになるので、すごいと思った」と、刺激を受けた様子。特殊メイクは「普段の授業で使わない道具を使い、おもしろく、実際に試すことができていい経験になった」と話し、「将来、CMや雑誌の仕事をする時に役に立つと思う」と収穫を喜んだ。アルゼンチンで生まれ育った松下エリカさんは海外志向が強く、日本語と美容を学ぶために単身、大分に移住した。講習では「ナチュラルメイクは、自然な感じなのに、きれいに目を奥深く見せるテクニックを教わったことが一番良かった。特殊メイクでは、血の色などを合わせるのが難しかったけど、うまく出来上がり、おもしろかった」と話した。米研修を受けたことで「高い技術を習うためにアメリカに留学したい気持ちになった」と、向学心をいっそう高めた。
 講師のマイケル・パックさんは、「メン・イン・ブラックⅡ」や「スター・トレックⅡ」など映画やドラマに出演するスターにメイクを施す一流の腕を持つ。今回の生徒について「本当の基礎を教えた。みんな真剣に聞
特殊メイクをした流血を披露する松下エリカさん(右)
特殊メイクをした流血を披露する松下エリカさん(右)
いてくれ、学ぶ意欲を感じた。美容を志す生徒だけど、ここで習ったことは、将来のキャリアにきっと役立つので頑張ってほしい」とエールを送った。
 奈良さんは、通常なら1カ月以上かかることをわずか3日間で教えたとし「いっぱい詰め込んだけど、生徒は一生懸命聞き、着いてきてくれた」と評価。奈良さんは、ユニオンに属し、ハリウッドの多くのメイキャップアーティストと親交しており「成功する人はメイクの腕はもちろん、人に優しく接する心を持っている」と強調する。生徒には、技術面のみならず、美容に対する態度について「いつも笑顔を忘れずに『みんなをきれいにしてあげる』という心を持ち続けてほしい」などと、教えていた。【永田潤、写真も】
修了証書を手にする生徒たち
修了証書を手にする生徒たち

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