3月2日、アカデミー賞の夜、私が行ったのは、エルカミノ大学、マーシー劇場で催された「ミラクルキッズ フェスティバル」である。ストームが上がったばかりの寒い夕方だった。ロビーは開場を待つたくさんの家族連れでごったがえしていた。予想をはるかに上回る大劇場に大観衆。その活気に圧倒された。
幕が上がると「絆太鼓」の演奏者が登場した。威勢のいい太鼓が響き渡る。一人の子供が自分の順番なのに太鼓を叩くのを忘れてしまった。すると、会場から手拍子がわきおこり応援するのです。舞台と観衆がしっかりと結ばれていた。
馬上真理子さんは20数年前に子供を授かった。障がいをもった子供だった。助けを求めたが日本語でサポートしてくれる組織が何もなかった。途方にくれた。自分同様に困っている人がいるにちがいない。助け合えないか。彼女はその時「手をつなぐ親の会」JSPACCを立ち上げた。
まず手がけたのはリソースブックの作成だ。障がい児のための教育、法律、医療、福祉サービス情報、専門化リストなどを網羅した。親への手引き書ができた。闇の中の家族に一条の光が差し込んだ。ボランティアサポートも組織した。草の根運動からはじまった地道な努力が今日の20周年記念公演に結晶した。
舞台上で跳ね回ってダンスをする子供たち。ミュージカルCatsを演じる子供たち。背後には音楽家、ダンサー、黒子となって助けるたくさんのボランティアの姿が見えた。
最後は車椅子の子供たち6人のタンバリン演奏だった。身動きできないウィーラーたち一人ひとりにスポットライトがあたる。中央のスクリーンにその子供たちの日常生活が映し出される。大観衆は水を打ったように静まり返る。
言葉はいらない。見れば分かる。家族と共に生きる日々の喜びが。生ある限り、チャレンジする。その喜びは格別ですと、彼らの存在が語りかける。
その夜遅くメールが入った。切符は1700枚売れ、観客実数は1200人でしたと。
馬上さん、おめでとう。チャレンジする人々の姿が寒い夜を温めた。
【萩野千鶴子】