長い夏休みも残りわずか。子どもたちの新学期が始まりつつあり、全米はいま、バック・ツゥ・スクール・シーズン。
親たちは、学校が始まると子どもの世話から解放されて清々する半面、騒々しいほど賑やかだった家の中が急に静かになって気落ちした感じになる家庭も多い。それでも9月の新学期を機に、また一段と成長していく子どもたちの姿が想像できて、総体的には明るい気分。
ところが、新学期の前に通過しなければならない関門がある。と、言ってもさほど大きな門ではないが、家計をやり繰りしている人にとっては厳しい関所。それは、スクール・サプライ、つまり学校生活に欠かせないバックパック、ランチバッグ、数々の文具品など必需品を揃えなければならないことだ。
全米小売業連盟の調べでは、学齢期(K-12)の子どもが2人いる標準家庭が支払うバック・トゥ・スクール費用は平均669ドル。文房具の単価はしれているとはいえ、衣類、靴に加えて最近は電子機器の支出が増加している。
なにしろ、小売業界にとってはクリスマスシーズンに次ぐ大きな「稼ぎどき」とされるバック・ツゥ・スクール商戦。値引き競争は当たり前。大手小売店が日替わりでディスカウント合戦を展開するから、消費者はいつ、どこで、何を買えば一番得なのか、頭が混乱するばかり。
こうしたアメリカの新学期騒動と比べ、桜咲く4月が新学期の日本は、さぞかし長閑(のどか)と思いきや、そうは問屋は卸さない。今年の春、日本の親戚の子ども2人が小学校に入学するとの知らせを受け、お祝いにランドセルでも贈ろうと値段を調べてビックリ。
バックパックのイメージから、ランドセルは高くても100ドルくらいかと思ったら、なんと平均で400ドル、上質なものは1000ドル以上という。贈る側としては良いものを贈りたいから、2人分なら2000ドル以上だ。小さな子どもの通学カバンにそれだけ費やす価値があるのか、と真剣に悩む。
日本の価値観についていけない「アメリカのおじさん」になってしまった自分を、否が応でも認識させられた新学期、バック・ツゥ・スクール・シーズンは、喜びと当惑が交錯する。【石原 嵩】