先日、台湾出身の仲間と久しぶりに会うと、「アメリカの名前の由来は?」の話題になった。
ネイティブ・アメリカンが既に居住していたが、アメリカ発見!はクリストファー・コロンブス、が定説だ。その歴史から見れば、彼の名前を付けてもおかしくはない。慣習として大陸名は、Europe(ラテン語のEuropaから由来)、Asia、Africaなど「a」(アの発音)で終わる女性形だ。だからクリスティーナ? もあり得た。
大航海時代は、多くのヨーロッパ人が探検に出た。イタリア、フィレンツェ出身の商人&探検家のAmerigo Vespucci (アメリゴ・ヴェスプッチ)もその一人だった。コロンブスより3歳若く、彼こそが、諸説あるが、名前の由来なのだ。4回(2、3回の説も)大西洋を渡り、1501年に北と南の分かれた新大陸と認識した。緯度、経度を記録し、海図を描き、現地の人たちの文化、食生活、宗教などを綴り友人へ手紙を送った。
1507年の書籍『Cons-mographiae Introductio』に初めて「America」が現れた。ドイツ人の地図製作者マルティーン・ヴァルトゼーミュラーが作成した新大陸の地図の付録として出版された。彼の友人で、その書籍の本文を校正したマティアス・リングマンが勘違いして(おそらく二人とも)、新大陸はAmerigo Vespucciによって発見され、ラテン語の「Americus」を女性形で「America」と名付けてしまったのだ。
そしてコロンブスが航海からヨーロッパに戻って来た時には、既に1000枚以上印刷したアメリカと呼ばれる新大陸の地図が出回っていた。それゆえ『アメリカ』が定着したらしい。
コロンブスはアジアを目指し西インド諸島に到達したが、そこはアジアでなくカリブ海だった。彼の勘違いを「新大陸」発見と正して、ヨーロッパ中に広めたのはアメリゴだった、というわけだ。
1901年のその地図1枚が発見され、この事実が明瞭になった。2003年には、アメリカ議会図書館が収得した。
そして現在、コロンブスが当初目指したアジアからわれわれは、夢を抱いてアメリカにやってきたのだ。気がつくと会話は2時間にも及んだ。アメリカの魅力である。【長土居政史】