愛犬2匹がキューバ産ハバニーズ種、高級葉巻のブランド名をとってモンテ・クリストと命名した。ということもあり、一度キューバには行ってみたいと思っていた。ところが盟友のY君に先を越されてしまった。
「カストロが死ぬ前に一度見ておきたいと思って行ってきたよ」とY君。新聞社を辞めた後、学生時代を過ごしたパリを再訪したり、ハーバードに留学したり、老いてますます知識欲、旺盛だ。
〈で、どんなだったの、キューバは〉「驚いたね。アメリカの経済制裁の凄さには…。とにかくキューバは時間が止まったまま。走っている車はポンコツのアメリカ車か、中古の韓国車。なんでもニカラグアあたりに輸出された車が三角貿易で入っているらしい。市民は貧乏生活を強いられている。でもみな底抜けに明るい。気候のせいもあるんだろうけど」
〈社会主義国のホテルはどうだった〉「ソ連向け砂糖のおかげで主産業だったサトウキビがソビエト連邦崩壊で衰退し、外貨獲得の手段は今は観光産業。だから外国観光客向けホテルは普通の国並み。サービスもすこぶるいい」
キューバ人が最も敬愛しているのはカストロ、チェ・ゲバラ、ヘミングウェーの御三家だ。ヘミングウェーは革命を挟んで22年間、キューバで過ごし、『誰がために鐘はなる』や『老人と海』など多くの名作をものにしている。ラム酒のカクテル、「フロディディータ」をこよなく愛した文豪の邸宅や通い詰めたバーは観光スポットになっているらしい。
〈で、ポスト・カストロのキューバはどうなる〉「建国の父が身罷れば、いずれアメリカと和解するだろうね。そして米資本がどっと入り込んで、いずれはドミニカ共和国並みの国になるかも。反米、反米と叫んでいてもキューバ人はしょせんアメリカ好きだからね」
カストロを嫌ってアメリカに亡命したキューバ人は延べ30万人。その二世、ルビオ上院議員(共和、フロリダ州)が16年大統領選出馬の構えを見せている。【高濱 賛】