1年間の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」が発表され、今年は消費税の増税が話題になったことなどを理由に「税」という漢字だった。日本漢字能力検定協会がその年の世相をあらわす漢字一文字を一般から募集し、最も多かった字が選ばれたのだそうだ。今年は16万通余りの応募の中からこの字が選ばれたのだそうだ。1年間をまとめる漢字が「税」とは、いかにもネガティブな発想で少々さびしい感がするが、これも世相を反映した一般庶民の偽らざる心情なのかもしれない。「税」という文字は古今を問わず常に庶民の生活とは切り離せない文字のようだ。
 東京在住の私の実兄は4年前、趣味の川柳で全日本川柳協会の年間大賞(文部科学大臣賞)を受賞したことがあった。このときの受賞作は、『木簡のここにも税の文字がある』だった。兄の説明によると、この作品は、大会での課題の中の一つ「漢字」という題で作ったものだったとか。古代中国で用いられた木簡は、日本でも飛鳥時代のころから出土しており、古代の木簡文字が現代の世相にまで反映している妙が評価されたようだ。
 日本は総選挙も終わり、政府与党による安定政権化が一層、確立しつつある。安定の上にあぐらをかいて、なんでも「税」に頼るのではなく、その前に政治が国民に約束してきた「身を切る改革」を忘れないで実行していただきたいものだ。ただ、今回の選挙では投票率が衆議院選としては過去最低だった。日本では大雪など、やむを得ない事情もあっただろうが、有権者が投票に行かないとは国民の権利だけでなく、義務の放棄だ。私たち夫婦は当地で在外投票に行ってきたが、こちらも投票率の低さが目立っていた。海外に住み、在外投票の登録がまだの人は今のうちに登録手続きを進め、次回の選挙に備えよう。
 今年の漢字で2番目に多かったのは、ソチオリンピックなどで数多くの熱戦が繰り広げられたことや、デング熱やエボラ出血熱に世間が騒然としたことなどを理由に「熱」の字が、また3番目は「嘘」の字が選ばれたとのこと。来年末はもっとポジティブで未来に希望のもてる漢字であってほしい。【河合将介】

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