武装していないカリフォルニア州立大学ロングビーチ校(CSULB)の学生がロングビーチ市警察(LBPD)の警官に撃たれ死亡する事件が先月発生。警官が発砲する必要性があったか否か疑問視する声もあり、4日には抗議集会が行われた。米国では警官による市民の射殺が増加しており、今回の事件でも警察批判が高まる可能性がある。
事件は先月27日午後7時半頃、ロングビーチ市の住宅街で発生した。ロングビーチ市消防局からの要請を受け、LBPDの警官が現場に駆けつけると、薬物の影響を受けているとみられるCSULBの学生フェラス・モラドさん(20)がいた。警官が到着する前、モラドさんは10分間にわたって友人たちと喧嘩をしており、その後アパート2階から窓ガラスを割って飛び降りたところで警官が到着した。
親族の話によると、事件が発生した夜、モラドさんはマジックマッシュルームと呼ばれる幻覚作用を引き起こす薬物を摂取していたという。マジックマッシュルームを摂取したのはその時が初めてだったというが、その幻覚作用で錯乱していたとみられている。
警官はモラドさんを静めようとしたが、指示に従わず立ち向かってきたため発砲。警官を脅迫するような言動もしていたと報じられている。モラドさんは近くの病院に搬送されたが、まもなく死亡した。
将来は弁護士を目指していたというモラドさんは全米討論大会で優勝したこともある。
モラドさんは武装しておらず犯罪歴もなかったため、警官が発砲する必要性があったか否か疑問視する声も聞かれている。4日には抗議集会が行われ、参加者はLBPD周辺を行進した。
全米では警官が公務中に市民を射殺するケースが増加。ワシントン・ポスト紙が発表した最新の調査結果によると、今年1月から6月1日までに全米で射殺された人の数は5099人。うち警官に射殺されたのは385人(男性365人、女性20人)だった。
警官に射殺された人を人種別に見ると、もっとも多かったのが白人で男性171人、女性9人。次に黒人で男性100人、女性5人。ヒスパニックは男性54人、女性3人。アジア系は男性6人。そのほかの人種は男性3人、人種不明者は男女合わせて34人だった。
317人が銃やナイフなどの武器を所持しており、玩具などのモデルガンを所持していたのは13人。49人が武装していなかったという。18歳以下は8人、最年少は16歳だった。
ロサンゼルスでも3月に、ダウンタウンのスキッドロウ地区で武装していないホームレスの男性がロサンゼルス市警察(LAPD)の警官に射殺される事件が発生。先月にもベニスビーチで同様の事件が起きている。2月にはLA市南西のハイドパークで、LAPDの警官が武装していない15歳の黒人少年に発砲し負傷させる事件も発生。少年の隣を歩いていた友人が持っていたレプリカの銃を本物だと思い発砲、弾丸が少年にあたった。LAPDはその後、間違いを認め本人と母親に謝罪している。