小泉宗由社中が点前を披露した本席では、「秋」と「月見」の演出が光った。床の間には、白隠が描いた、僧侶が月見をしている「坊ノ画」に、「江上…(水面に月が浮かんでいる)」という漢詩が書かれた「布袋画賛」が掛けられ、風炉先は古木で作られた「月に兎」、水指はまゆ形の「萩」。主菓子は、ちからもち製の「薄紅葉」、他のお菓子はもみじ、すすき、稲穂、かかしなどと、趣向を凝らした。
野点席には、ススキと萩、そして月見まんじゅうが飾られ、コオロギの鳴き声が響き、秋の風情が庭いっぱいに漂った。日が落ちて暗くなると、いよいよ茶会と並ぶ「主役」の登場だ。この日は「中秋の名月」の前夜で、ほぼまん丸い月が澄み切った夜空に浮かび上がると「まあ、きれいなお月さま」などと、感嘆の声が聞かれ、写真に収める人が多く見られた。
点前を披露したのは、野本宗智社中。野本師と門弟12人はすべて、英語を話すため協会の趣旨「アメリカで日本の伝統文化を普及する」にふさわしく、「バイリンガルの生徒を育てたい」と、切に願う小泉師から大きな期待が寄せられている。
野本師は、弟子について「今夜は、各自が役目を立派に務め上げてくれた」と誉め、「日本語が分からず、日本に何のバックグラウンドを持たない生徒ばかりだが、普及のために一同で精進したい」と、抱負を述べた。
ヨーバリンダから来たゲストのトレーシー、パティー・ヒュー—ウィトニーさん夫妻は、2度目の茶会参加。「すばらしいセレモニーを見せてもらった。お菓子とお茶、料理がおいしく、月がとてもきれいで、楽しい時間を過ごすことができた。また参加したい」と喜んだ。
小泉師は、茶会について「月がきれいに出て、みなさんに満月を見てもらえて、よかった。『アメリカでこんな雅な茶会ができることはすばらしい』と誉めてもらった。うれしく思い、苦労したかいがあった」と語った。各社中の弟子、孫弟子のもてなしを評し「お客さんを待たせることなく、よく働いてくれた。支度からたいへんだったけど、がんばってくれた」とたたえた。【永田潤、写真も】