アジアン・パシフィック・アメリカン・コーカス(Asian Pacific American Caucus)に所属する連邦議員たちが中心となり、敬老売却問題をめぐって動き出した。4日午後、コーカス理事長のジュディ・チュウ下院議員(民主)、小東京やボイル・ハイツを選挙区に持つハビエール・べセラ下院議員(民主)、ガーデナを選挙区にもつマキシン・ウォータース下院議員(民主)ら16人の連邦下院議員がカマラ・ハリス・カリフォルニア州司法長官宛に、「敬老」売却の延期と公聴会開催を依頼する2ページにわたる書状を連名で提出した。現在、カリフォルニア州選出の連邦上院議員に民主党から立候補を表明しているハリス司法長官だが、総選挙を来年に控える中、政治的なダイナミクスが今後どう売却問題に影響を与えるのか注目される。【中西奈緒、モニエ中地美亜】
Click here to view English coverage
アジアン・パシフィック・アメリカン・コーカスは、アメリカ全土のアジア系アメリカ人やパシフィック・アイランダースのコミュニティーの要望や関心事を傾聴、弁護する立場の議員グループで、ジュディ氏は2011年にその理事長に選ばれた。今回、この書状にサインしたメンバー16人のうちこのコーカスのメンバーは11人を占めている。
書状には「敬老の売却に関して居住者や関係者に十分な情報が与えられていなかったこと」「敬老側が公聴会の開催を回避していたこと」によって、一般の意見聴取期間中に「売買契約書の詳細が知らされていなかったため、売却による影響を検討、考慮する機会がなかった」とし、さらに「現在の居住者にとって数年先の居住条件が不透明であること」などにも触れ、ハリス司法長官に売却の延期と公聴会の開催を要請する内容になっている。(書状内容全文はこちらから)
アフリカ系アメリカ人とアジア人の血を受け継ぐ同氏の就任を受け、多くの民主党員はその生い立ちに触れ、彗星(すいせい)のごとく現れた司法長官と表現した。ハリス氏はもともと犯罪、治安、性的暴力、移民問題などを中心に取り組んできた。
今回の敬老売却の件は、慈善団体に関わる取引などを専門に扱っている州司法当局サンフランシスコ・オフィスの副司法長官、スコット・チャン氏が中心に担当している。カマラ氏は部下たちが審査した案件を最後に承認するかどうかを判断する立場であることから、実際に今までこの件にどれだけ関わってきたかは分かっていない。
ただ、状況は刻々と変わりつつある。今回の16人の連邦議員からの書状だけではなく、10月16日には州議会で高齢者と長期看護委員会の副議長を務めているデビッド・ハドレー州下院議員(共和、66区)からも今回と同じ趣旨の書状が提出されていることや、すでに日系コミュニティーから多くの署名が提出されて、英語のローカルメディアもこの問題について取り上げている現状がある。
16年の上院議員選に立候補を表明し、積極的に選挙活動を始めているハリス司法長官が今後どうこの問題に関わり、敬老売却問題に影響を与えるのか注目されている。