大統領選挙に向け、ヒラリー・クリントンの汚点のひとつは、イラク戦争の決議(The Iraq Resolution)に賛成投票した事実だ。2002年アメリカがイラクに対し軍事行動を起こすことを可決した公法107―243(10/16制定)だ。当時は、ジョージ・W・ブッシュ大統領。ヒラリーはNYの上院議員だった。
 総議員(上院&下院)の70%(374名)が賛成、29%(156名)が反対、1%(3名)が棄権した。当時、上院議員だったジョン・ケリー(現国務長官)やジョー・バイデン(現副大統領)も賛成したが、バーモント州下院議員だったインデペンデントのバーニー・サンダースは反対した。
 ところで2001年、911惨事発生72 時間後、要旨60 文字数で練り上げた法案がある。戦争やテロに早急に対処する目的のAuthorization for Use of Military Force Against Terrorists(略してAUMF、公法107―40)だ。「911テロ事件に関与した国、組織、個人に対する武力行使の権限を大統領に与える…」。
 一人反対した議員がいた。民主党のバーバラ・リー下院議員(カリフォルニア)だ。彼女が懸念した根本的な理由は、内容の解釈があまりにも幅広過ぎて、大統領に権限が偏り過ぎていること、撤退計画や具体的なターゲットなしに慌てて無制限の戦争を開始したら、多くの女性、子供、非戦闘員たちが犠牲になること、過去の戦争の同じ過ちを犯さないこと…などだ。
 1941年、アメリカが日本に対して宣戦布告したが、唯一反対したのが、ジャネット・ランキン議員だ。モンタナ州出身の史上初の女性アメリカ議員である。第一次世界大戦やベトナム戦争にも反対。反戦活動、平和主義の理念を生涯貫いた。彼女たちの勇敢な発言、行動は素晴らしい。
 AUMF合法化以来、これまで14カ国で37回(ブッシュ大統領の下で18回、オバマ大統領の下で19回)の米軍による軍事作戦が行使された。ウサマ・ビン・ラディンの殺害やドローンによるアルカイダ、ISIS、タリバンなどの指導者たち殺害も含まれる。
 次期大統領に、戦争を終結し、平和な国際社会を作り上げてほしい。責任は重い。【長土居政史】

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