秋と冬は雨の季節と相場の決まっているシアトルでも、これまでのような小糠雨とは違い、近頃は日本の梅雨のような大粒の雨が降り続き、随分気候が変わってきたものだと思わされる。
 ところで、驚かされるのは天然自然の営みだけではない。
 大統領選挙の様相にも様変わりがあるようだ。というか、今回私は、すぐそこにせまっている大統領選挙を街の中に見ることが出来ないでいる。
 もちろん、新聞、テレビ、インターネットは連日、トランプ候補の過激な言動やクリントン候補の公私混同Eメール使用に関する記事等でにぎわっている。
 けれど私の見る限り、今回は「トランプ、ペンス」のステッカーを貼った車も走ってなければ、「クリントン、ケーン」のステッカーを貼った車もない。まさか車を使っての候補者支援が禁止されたわけでもないと思うが。多くの羅新読者の住んでおられる南カリフォルニアではどうだろうか。
 シアトルなど人口が集中するワシントン州の西部は、民主党支持者が多いとされてきた土地。それでも大統領選挙のたびに、街を走ればそれぞれ民主・共和両党の大統領・副大統領候補者の名の入ったステッカーをつけた支援者の車が何台も目の前を走っていた。あの光景はいったいどこへ。あの情熱的な支援者たちはどこへ消えたのだろう。
 今回の選挙は確かに、これまでになく迷いの多い選挙に違いない。「サンダースの掲げる理想に共鳴するけれど、彼では選挙を戦えないから民主党候補はクリントンに一票を投じた」と語った知人。トランプ候補を支援するかどうか最後まで迷いを見せていた共和党政治家たち…。そして、候補者による個人攻撃が過熱すればするほど、どこか白ける思いが生じてしまう選挙戦。
 消極的支援、消去法による投票という言葉が頭をよぎる。
 とはいえ、泣いても笑っても来週には決まる次期大統領。移民排斥などと叫ぶ候補者がアメリカ大統領に選出されないことを、私は切に願っている。
 シアトルの雨はといえば、今年10月の降雨量はこれまでの記録を超えた。【楠瀬明子】

Leave a comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *