今、実世界だけでなく、映画の世界でも人種をめぐる争いが頻発している。
「アジア系俳優は表情が乏しいため配役が難しい―」。これは社会学者ナンシー・ワン・ユエン氏のハリウッド俳優と人種差別についての著書の中で、ハリウッドの配役担当者にインタビューした際の言葉として紹介されている。これをエンターテインメント系雑誌「Paste」が取り上げ今物議を醸している。
当然アジア系の人々は異議を訴え、インスタグラムなどのソーシャルメディアに「#ExpressiveAsians(表情豊かなアジア人)」とハッシュタグを付け、さまざまな表情をしたアジア系俳優らの写真を投稿し反撃に出た。
ハリウッドでは近年、非白人の役を白人が演じる「ホワイトウォシング」や、人種的マイノリティーの配役をめぐり、たびたび問題が取り上げられている。先月には人気コミックのリメイク版映画「ヘルボーイ」で、原作では日系人として描かれている役に白人俳優が起用されたことで後日、俳優自ら出演を辞退する出来事があった。
結局、その役には韓国系俳優の配役が決まったが、原作に忠実に基づき日系人俳優が起用されることはなかった。配役は大変難しい工程なのだということは想像できるのだが、やはりハリウッドはアジア系であれば皆同じという認識なのだろうか。過去に映画「SAYURI」で日本人の芸者役に中国人の女優が起用されたことを思い出してしまった。
そんなさなか、今度はディズニーの実写版映画「アラジン」の配役をめぐっても論争が勃発。ヒロインのジャスミン役にイギリス出身のインド系女優の配役が決まり、ソーシャルメディアなどでは「インド系もアラブ系もハリウッドは同じと考えているのか」と批判が相次いだ。さらに主人公アラジンの恋敵として北欧出身という設定の白人の王子が新キャラクターとして登場することになり、疑問視する声もでている。
ハリウッドのマイノリティーの描かれ方に対する問題は尽きない。だがソーシャルメディアの発達により、評論家だけでなく一般の人々も意見を発信できるようになり、問題提起しやすくなった。こうして声を上げることで改善されていくといいのだが。【吉田純子】