バルセロナには陽気な音楽が似合います。地下鉄の中でも、街の端々でもストリートミュージシャンによる演奏が溢れていました。
 数年前には経済危機が起こった国ですが、楽観的な国民性なのか、治安は良く、ゆっくりと人生を楽しんでいるようにも思えます。そして、この街の誰もがアントニ・ガウディのことを感じて暮らしているように思えました。あちこちに彼の建築物があるからです。グエル公園にも、バトリョ邸にも、ミラ邸の集合住宅にもガウディの特徴的なデザインとこだわりの思いが詰まっています。
 圧巻は、街の真ん中に聳えるサグラダ・ファミリア(聖家族教会)です。1882年に建築が始まりましたが、いまだに完成していません。ガウディのあまりの緻密なこだわりと度重なる変更の指示に技術が追いつかなかったのだそうです。
 しかしながら近年、3Dなどの技術革新によって、彼の没後100年になる2026年に完成の目処(めど)がたったのです。誰が撮った写真にもクレーンが写り込んでおり、100年以上前の古い色と、少しずつ組み上げられる新しい歴史が混ざり合った美しさを持っています。
 天井には植物の葉のデザインが施され、木の根や枝のような形の柱を見ることができます。もちろん、ステンドグラスから注ぎ込まれる見事な光彩は、いつまでも見ていても飽きないものがありました。
 ガウディの言葉は今でも新鮮です。「創造的であろうとして、意味の無いものを付け加えてはいけない。自然の原理をよく観察し、それをより良くしようと努力するだけでいい」「芸術におけるすべての回答は、偉大なる自然の中にすべて出ています。ただ私たちは、その偉大な教科書を、紐解いていくだけなのです」「自然界には直線は存在しない。直線は人間に属する。曲線は神に属する」「すべての建築にはヒビがある。すべての人間に罪があるように。大切なのはこれを致命傷にしないことだ」
 一世紀を超えて伝えられるガウディからのメッセージは、私たちを力づけ、自然を教科書として学ぶことで生きるヒントを教えてくれました。【朝倉巨瑞】

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