カメの生態を描くドキュメンタリーを鑑賞した。舞台はオーストラリア北東部の海岸。80〜100歳程生きるアオウミガメの人生を追う。生まれてから海へ旅立ち、何十年おきに故郷の海岸に戻っては産卵し、再び海へ回遊、という冒険物語だ。一生のうち泳ぐ距離は地球から月を一往復にも及ぶ。
海中に浮遊する透き通った白いクラゲを主食とする。しかし、類似するプラスチックのポリ袋と見分けがつかず間違えて食べて、消化せずに喉や腸に詰まって死んでしまったり、近年は漁網に引っかかり犠牲になったり、ボートと追突事故死したり、など多発している悲しい現状の社会問題も提議する。
アオウミガメは、奇しくも同時期、故郷に皆一斉に集まる以外は、ほぼ集団行動もせず、親から世話されることもない。表情も変えず黙々と広大な海を孤独に泳ぎ続ける姿は、尊崇ささえ感じる。
海岸で一回100個の卵を産卵(一生に何千個も)する。60日後、孵化すると、直ちに海を目指して小さな体で必死になって走り出す。まさしく本能であろう。応援したくなるが、悲しいかな、結構長い道のりだ。空から鳥たちなどの格好の餌食になってしまう。やっと海に辿り着いても、さまざまな天敵に狙われる。十分体が大きく成長し比較的安全な大人になるまでの生存率は千分の一程だ。
なぜ生まれ故郷に戻ってこれるのか? この理由は、目に見えない地磁気を感知していることが、2015年の研究調査によって解明された。
ちなみにカメは、両生類ではなく爬虫類に属する。ワニ類やトカゲ類と同様、孵化するまでの温度によって性別が決まる。最近の調査によると、温暖化でこのオーストラリア北東で生まれたアオウミガメは99%メスだったという。深刻な問題である。
海面に出て呼吸しなければならないが、心拍数を遅くして6時間連続で海中に潜り続けられる生存機能を持ち合わせる。
中国で発見された2億2千万年前の恐竜時代の甲羅のないオドントケリスが祖先らしい。地球において学習能力と知恵を備えたカメの方が人間より格段大先輩というわけだ。人間は尊敬すべきカメからもっと学ぶべきである。【長土居政史】