略奪の被害に遭った店先に立つRIF・LAのオーナー、ジェフリー・マラバナンさん

この騒乱で略奪者の標的になったのは、ハイエンドまたは収集家向けのスニーカーを販売する高級運動靴店だった。ジェフリー・マラバナンさんが2街で経営する人気の靴店と服店は二夜連続で侵入され、略奪された。

5月31日の午後、マラバナンさんは、盗難を免れた商品をできるだけ早く店外に避難させようと、「RIF・LA」の店の外で手伝いの友人たちを待っているところだった。「最初の夜、午前3時に電話がかかってきて」、とマラバナンさんはアイスティーをゆっくりと飲みながら説明した。「来てみると私の衣料品店では、まだ人々が出入りしていて、略奪を続けている最中だった」
「RIF」の店頭にあった商品は略奪の最初の波でほぼ一掃されてしまったが、大量の在庫は次に備えて安全な場所に移すことにした。「正直なところ、大きな在庫を抱えているので、すばやく移動する方法がなかった。それで今日もここに来ている。これから10台ほどの車に在庫を分載し、家に運ぶ計画だ。私たちの倉庫室はまだ靴でいっぱいだし、服店の商品も残っているので、できるだけ多くを持ち出すつもりだ」

再出発を決意した小東京を愛するオーナー、ジェフリー・マラバナンさん

マラバナンさんとパートナーのエド・マテオさんが元のオーナーのカイ・ナガクサさんから靴店の在庫と経営を買い取った後に、コレクター市場が高まり、高級スニーカーがブームになった。一般人はもとよりプロスポーツ選手や芸能人が夢中になって、希少品や、最新の「エアジョーダン」を追い求めた。
小東京は、スニーカー愛好家やコレクターのための店が集中している。「RIF」の数軒西には、プレミアムアクセサリー販売とスニーカーのクリーニングをする「ジェイソン・マルク」や、土曜の夜に襲われて商品を完全に一掃された「シューパレス」がある。
真夜中に店に駆け付け、犯罪者が生計の種を奪っているのを目の当たりにしたとき、マラバナンさんはとっさの本能で店を守る行動に出た。「だが、次はその立場を取るつもりはない」と述べた。「私は衝動的に動き、バットを持って座り込んで暴徒と向かい合った。ある意味、愚かだった」と続ける。「もう一度それについて考え、また、今、世界中で起こっていることを見れば、私は死んでもおかしくなかった。彼らの多くはナイフや銃を持っていた。幸い、彼らは何もしなかったが。だから次は、もうしない。少なくとも3人の子供たちのいる家に帰って、生きていることが大事だ」
最初は事件に腹を立て、すべてに対して怒っていたマラバナンさんだったが、子供たちの待つ家に着いたら、怒りが消え去った。何が起こっているのかを理解したし、『持っていきたければ、いけばいい』という気持ちになった。自分がけがをしないこと。それだけが重要だ」
店には保険がかけてあるとはいえ、補償額は損失を埋め合わせるのに十分ではないと分かっている。だが、マラバナンさんは落ち着いた様子で、できるだけ早く店を再開すると誓った。 「私は小東京が大好きだ。私たちは14年間ここにいる。これからも永遠にここに留まるつもりだ」【マイケル・カルロス、訳=長井智子】

店内は荒らされ棚からは商品が消えた

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