先回のような秋晴れの10月ならともかく、酷暑の夏の日本ではと、大きな疑問を感じたオリンピック東京誘致だった。それでも、開催が決まった以上は、盛会であってほしいと願ってきた。
 エンブレムや国立競技場の設計変更など、いくつか初期のつまずきはあった。が、誰も想像しなかったのは、新型コロナウイルスによる一年延期。そして、一年延期すれば翌年は安心安全なオリンピックが開催できるだろうという見込みが、変異株の登場で大きく外れたことだ。
 海外選手および関係者の入国や競技会場での観客の集まりが感染を拡大させることを恐れ、日本国内では開催直前まで、中止や再延期の声が聞かれた。だが、オリンピック開催に面子をかけている主催者には、それはもう考えられないことだったろう。私もまた、モスクワ五輪ボイコット決定時の選手たちの絶望的な表情を覚えており、できるものならこのまま予定通り開催されることを願っていた。
 そんな中で、日本国内の感染者は再び増加傾向に。そこで妥協点として、ほとんどの競技につき観客を入れない無観客試合とすることになった。熱戦をナマで見る機会を失い、失望した人も多いことだろう。が、少なくとも、競技会場内外での大勢の観客で感染が爆発的に拡大する事態だけは避けられるはずと思いたい。
 とはいえ、現在九州福岡にいる私と高齢の母には最初から、テレビ観戦の選択しか無い。深夜まで続いた開会式では聖火台に火が灯される瞬間は見届けられなかったものの、以後、時間があればテレビの前でさまざまな競技を観戦している。
 日本人選手によるメダル獲得があると、そのたびにニュース番組は活気づき、何度も繰り返し報道されている。しかし、日本のメダル獲得数が多いに越したことはないだろうが、今回私がもっとも願うのは、無事に大会が終わることだ。
 コロナ感染や熱中症による重症者や死者が出ることなく、競技進行が台風や地震などに大きく影響されることなく、なおかつテロやサイバー攻撃にさらされることも無く…。オリンピックとパラリンピックが平和裏に終わることを、心から願っている。【楠瀬明子】

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