エアポートメトロの起工式で話すメトロCEOのステファニー・ウィギンス氏。左奥はロサンゼルスのエリック・ガーセッティー市長=6月21日

変革の時代の交通機関、新駅、マングローブはどうなる?

通称メトロの名で呼ばれるロサンゼルス郡都市圏交通局( Los Angeles County Metropolitan Transportation Authority)はは郡内の交通計画を策定し、公共交通網の一部を通称メトロの名で呼ばれるロサンゼルス郡都市圏交通局( Los Angeles County Metropolitan Transportation Authority)は郡内の交通計画を策定し、公共交通網の一部を運営する巨大な公共事業体。現在、小東京でもメトロの大規模な工事が進行中で2022年には新しい小東京駅とリージョナルコネクターが開通する予定である。このほどメトロのCEOに就任し、大きな変化を遂げつつあるロサンゼルスの交通環境を監督する立場のステファニー・ウィギンス氏に羅府新報がインタビューした。

 意外にもウィギンス氏は日本で暮らした経験があるという。自称「ミリタリー・ブラット」(軍人家庭育ちのガキ)のメトロ新CEOは、米空軍勤務の父親が駐留していた沖縄で幼少期を過ごしたことを明らかにした。

 「沖縄は5年間。幼少の頃だったので、小さな女の子としての大好きな思い出がたくさんある」とウィギンス氏。次に日本に住んだ経験は2007年の東京。USC(南カリフォルニア大学)でMBAを取得しているときだった。

「ミリタリーの家庭で育った私はさまざまなバックグラウンドを持つ人々と関わったり一緒に暮らした経験があり、それが公共交通機関という場でキャリアを築く上で役立っています」

 以前は南カリフォルニアの通勤列車システム「メトロリンク」でCEOを務めていた。このほどメトロを率いる初の女性CEOに就任し、CEOとして70億ドル近い予算を管理し、最大200億ドルの資本建設プロジェクトを監督し、2200台のバスと鉄道6路線が毎日50万人以上の乗客を輸送する従業員1万1千人の事業体を率いている。

ラ・ベランダ共同開発の起工式で話すウィギンズ氏=7月1日

 USCマーシャル経営大学院を卒業したウィギンス氏は、「過去の経験がメトロを経営するという課題への備えになった」と述べる。「私の公共交通機関でのキャリアはすべて南カリフォルニアだったので、全米で第3の規模の交通局であるメトロの上に立つことになったとき、私自身、十分に準備ができていると確信しました」

回復から五輪に向かう都市 メトロの未来は人々が焦点

 「いまは特にパンデミックから抜け出そうとしている時期です。これまでと違う視点で考えることがおもしろいときです。私たちがコミュニティーと関わり、サービスを提供し、ロサンゼルス郡の公平な回復において大きな役割を果たすことができるようにする方法について、考えています」

 4月に就任が発表されたとき、メトロ理事会の理事長を務めるロサンゼルス市のエリック・ガーセッティー市長は、都市が新型コロナ禍から回復し2028年の夏季オリンピックに向かっていく変革の時代にメトロを導く適切なリーダーだとウィギンス氏を称賛し、「ステファニーのキャリアは、現在のこの事業体を率いるのに理想的だ。ステファニーには経験があり、信念があり、公平に取り組むことができ、LAの輸送事業の歴史が体に染み着いている。メトロを次の章に進めるのに最適な人選だ」とたたえた。

 ウィギンス氏は「私の在職期間中の焦点となるのは人々。メトロの従業員と交通システムを利用する人々の両面から、人々が焦点になるだろう」と述べ「優れたカスタマーエクスペリエンスへの取り組みを倍増させていく」と強調した。

コミュニティーの意見を取り入れてバスのサービス改善を模索する

 「NextGen  バスプラン」は現在のバス運行システムを再考し、コミュニティーの意見を取り入れて改善を目指している。2万人以上の住民が個人的な経験に基づいて意見を提供した。

 「私たちがコミュニティーと対話をして分かったことは、住民はより速いサービス、より頻繁なサービスを求めているということでした」

小東京トランジット開発の行方 日本街の次の章を定義する

 1街とセントラル通りの角にリージョナルコネクターのために建設中の駅工事は最終段階にきており2022年に完成する。駅上の主要な区画は共同開発が予定されているが、小東京コミュニティーは特に、1街とアラメダ通りの北東の角にある「マングローブ」と呼ばれる空き地に目を向けた。ここは、この歴史的な地区に残された最後の公有地区画の一つである。


サステナブル・リトル東京によるビジョンの一部として作成された「マングローブ」のレンダリング(完成予想

 7月2日、ロサンゼルス市議会はマングローブと駅敷地の開発に関し、最高立法アナリストがメトロとの覚書を交渉して実行することを承認するという動議に全会一致で賛成した。動議は評議員のケビン・デ・レオン市議が提出した。

 動議の中でデ・レオン市議は、区画は「小東京コミュニティーにとってかけがえのない開発の機会を表している」と述べ、「両区画は持続可能な小東京のビジョンの一部である。その開発は小東京、ロサンゼルス市、メトロの3者が相互に協力し調整する機会を提供することになる。コミュニティーが最大の利益を享受できるように共同で開発の提案依頼書を作成することが、市とメトロの最大の利益になる」と強調した。

 昨年11月、メトロは「提案がコミュニティーの優先事項と一致しない」という小東京の利害関係者からの懸念を受けて、共同開発契約を締結するためのスタッフの推奨にブレーキをかけた経緯がある。

 ウィギンス氏は「共同開発の重点はコミュニティーの要望とニーズを反映するプロジェクトにあるべきだ」と述べる。

 「メトロの理事会は少なくとも5〜6年前に開発業者と共同開発の関係を検討することを義務付け、コミュニティーで精査されていなかったりコミュニティーの要望を反映していなかったりした場合は概念を進めないことを義務付けています。

ラ・ベランダの起工式の様子=7月1日

 共同開発は常に鍵です。私たちはこれまでコミュニティーと10年以上かけて計画と協力を行ってきて、その上で建設の段階にきました。私たち全員が、計画通りに全てのメリットを得られるよう、その点を確かにしたい。これら全てのメリットが実現されていることを、確認したいと思います。建設が始まる前にそこにあった中小ビジネスが、リージョナルコネクターの建設後、その結果としてやってくる新しい顧客から利益を得ることができるようにしたいと思っています」

新CEOに期待する 小東京コミュニティーの反応

 小東京のリーダーたちは、リージョナルコネクターの開通だけでなく、新線拡張となるウェストサンタアナブランチ・トランジットラインも見据えているため、新しいメトロCEOを歓迎している。メトロのスタッフは7月30日にドラフト環境影響レポート(DEIR)を発表したが、それによると小東京のアラメダ通りの地下を走る案を含む4種類のルートが提案検討されている。アラメダ通りの1街と2街の間に新駅が新設される可能性もある。

 メトロ理事会は地元コミュニティーが最も支持する案を採用するために、新しいライトレール路線についてのパブリックコメントを受け付けており、8月は3回のオンライン会議が開催される。

 元米国運輸長官で全米日系人博物館の理事長を務めるノーマン・Y・ミネタ氏は、「小東京地区の交通と開発のニーズに対応するために、当博物館はウィギンス氏および小東京の利害関係者らと提携することを楽しみにしている」と期待を寄せる。「広大で複雑なロサンゼルス郡の交通機関のニーズは、メトロのCEOとしてのステファニー・ウィギンスによって十分に満たされるだろう。メトロリンクの元CEOおよびメトロの副CEOとしての彼女の長年の経験とリーダーシップを鑑みれば仕事を成し遂げることができる輸送の先見者であることは間違いない。彼女はメトロに対するビジョンの中ですでに、公平性と顧客サービスについて強調している。郡の交通機関のニーズに対応するという彼女の取り組みを私は称賛する。メトロがリージョナルコネクタープロジェクトと博物館の向かいにある新しい小東京駅を完成させるまで、彼女と協力できることを楽しみにしている」と賛辞を贈った。

 小東京ビジネス協会のエレン・エンドウ会長は「小東京はロサンゼルスで最も忙しい乗換駅の一つになるので、私たちはこの新しい役割に関連する課題への準備をしているところ。新CEOが(これまでの経緯を知る)メトロの出身だという事実は、継続性を確保するのに役立つだろう」と期待を寄せた。


コミュニティーの公平性を維持し小東京との協力を約束したウィギンス氏

 小東京コミュニティー・カウンシルのアイリーン・シモニアン議長は「小東京の内外で進行中の他のいくつかのメトロプロジェクトが前進し、リージョナルコネクターがようやく完成に近づいている中、当評議会は今後数年にわたりメトロとのコラボレーションを継続することを楽しみにしている。ウィギンス氏と手を組むことを切望している。そして彼女が公平性とコミュニティーのパートナーシップに焦点を合わせると言ったことに感謝している」と歓迎した。

 サステナブル・リトル東京のプロジェクトマネジャーであるスコット・オオシマさんは、「われわれはメトロのCEOになったステファニー・ウィギンス氏と協力して、リージョナルコネクター駅でコミュニティー主導の公平な開発を行うことに興奮している。ロサンゼルス郡で2番目に混雑する交通ハブとなるこの駅は、歴史的なジャパンタウンの未来の鍵となるだろう」と希望を託した。

コミュニティーの公平性を第一に 完成間近、協力を約束

 「私が副CEOだったとき、私たちは小東京コミュニティーと協力してリージョナルコネクターとその影響について話し合いを重ねました。そこでは、公平性に対応するのではなく、全てのことにおいて公平性を第一に考えるべきだということについて、多くの教訓を得ました」。このように述べるウィギンス氏は、メトロと小東京の関係について「私たちは小東京の良い隣人になることを望んでいます。いま、私たちは正式にこの地域にやって来ました。ここで、私たちは小東京コミュニティーの活気の一部になりたいと思っています。メトロとリージョナルコネクター駅が、小東京の全ての出来事に関わっていけるように、しっかりしたいと思っています」。ウィギンス氏は、「リージョナルコネクターは完成に近づいており、メトロは小東京との協力を継続することを約束します」と述べた。

 【グエン・ムラナカ 訳=長井智子】

新CEOに就任したステファニー・ウィギンズ氏を最適の人選とたたえたロサンゼルスのエリック・ガーセッティー市長(前列左端)と、ロサンゼルスのヒルダ・ソリース郡政長官(同左から3人目)にはさまれて写真に収まるウィギンズ氏と、Metro関係者。

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