しばらく日本で暮らすことになった。美しい自然においしい食事、サービスの良さや時間に正確な交通機関、ごみのないきれいな街、そして国民皆保険制度…。多くの魅力があり世界中から観光客もやってくる。
しかし日本での生活に息苦しさを感じてしまうのはなぜなのか。ハワイやロサンゼルスで当たり前だった多様性や人権意識を日頃感じられないからだろう。
街を歩けば皆が同じような顔と肌の色で似たような服を着ている。店に入ればロボットのようにマニュアル化された言葉を繰り返す店員たち。テレビでは似たようなお笑い番組が、音楽チャートでは違いがよく分からない女性アイドルグループたちの曲が溢れる。どんなものも「正解は1つだけ」という固定観念に動かされているように見える。
女性に対する意識も「1つの正解」を求めているようだ。企業広告で商品やサービスの紹介するのはどれも女性。雑誌やネットの「モテ服」「モテ髪」特集がもてはやされ、男性の好みにあわせ媚を売り、商品として消費されていく女性たちがいかに多いことか。男性中心の目線で社会が形成されているように感じて息苦しく、ばかばかしい。
世界経済フォーラム(WEF)が10月に発表した各国の男女格差を比較した報告書によると、日本は世界144カ国中111位。中国やインドよりも低い。近年女性の国会議員や企業の女性管理職は増加傾向にあるが、2020年までに30%以上にするという目標まではほど遠い。
さらに依然として減らないセクハラやマタハラ。夫婦別姓の議論もなかなか進んでいない。国連は今年、女性の差別撤廃に向けた取り組みが不十分だとして日本政府に対して5回目の勧告を出した。ヨーロッパに住む友人たちに言わせれば「日本女性の地位は2世代遅れている」とのこと。
多様性や高い人権意識を謳うアメリカもいまやトランプ次期大統領の人種差別発言や女性軽視発言で危うい状況だ。しかし日本も根源は同じではないか。そう思うとトランプ氏の発言を「時代錯誤だ」「人権問題だ」と他人事として笑うことはできない。【中西奈緒】