待っていました、とばかりにヒーローが現れた。素直にそう思った。こんなこと、人生でそうそうないのではないか。
 あなたが実現しようとしている社会に100パーセント賛成します。声をあげてくれてホントありがとう。手伝えることがあれば何でもします。なーんて、心の中で呟いている。
 今月9日、一部上場企業のソフトウエア会社社長の男性(46)が国を相手取って提訴した。結婚を機に戸籍上は妻の姓に変え、ビジネス上では旧姓を使っている彼は、2つの名前を使い分けることにあまりに不利益が多い現状に気がついたという。
 今回起こした裁判は、結婚後に苗字を一緒にしたり、別々にしたりを「選べる」社会を目指すもの。日本人と外国人のカップルは選択の自由があるのに、日本人同士ではどちらか一つを選ばなくてはならないのは憲法違反だ、という戸籍法の不備をつく裁判。勝てば法改正につながる可能性もある。
 インターネット上での反響も大きい。この原告が1カ月ほど前に始めたウェブ上での署名活動「Change.org」ではすでに4万人近くがサイン。5万人に届くのも時間の問題だ。
 2015年の最高裁判決で夫婦同姓を定めた民法の規定は「合憲」とされたが、同時に、夫婦選択的別姓は「合理性がないと断ずるものではない」として国会での議論を促した。しかし、あれから2年。議論はいっこうに進んでいない。
 そんな現状に風穴を開ける今回の提訴。しかも、原告が男性であるというとても珍しい初めてのケース。仕事でこの一連の記事の英訳を担当しながらわくわくしている。本当に社会を変えることができるのではないか、と。そして、この日本の奇妙さを海外に伝えることができるのも、やはり、やりがいがある。
 ある新聞のインタビューで、その男性はこんなことを言っていた。夫婦別姓の問題は日本社会が抱える課題と重なるのではないか、と。「一律であるべきだという考えから抜けきれないのが今の日本社会全体の問題の根本。互いの違いを認め、個性が組み合わさった楽しい社会であれば、日本の生産性ももっと向上するのではないか」。そうそう、その通りだと思います。【中西奈緒】

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