「これまでヘイトクライムを通報しない、通報したくない、ということにはそれぞれに事情があるのは分かっているが、あなたに起こったことを警察に知らせることによって、警察は何が起こっているかを把握し、あなたの周りの人々を守るために活動することができる。あなたの体験をレポートすることが、ヘイトクライムに対処する上でとても大切なことだ」と話す。
LAPDのトニー・イムさんによると、今回、LAPDは同様の動画を英語、日本語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、タガログ語で全7種類、制作した。アジア系の各コミュニティーに対して報告の重要性を喚起しようとしている。
イムさんに現在のヘイトの原因と対処を聞くと、最近よく言われていることだがイムさんもまた、この社会現象の根底に「パンデミックは中国からもたらされた」という考えの流布があることを挙げた。そのために憎悪が向けられているが、アジア人の顔から出身国を特定することはできないので、アジア人全体が攻撃の対象になっている。パンデミックのために仕事を失うなどして鬱積(うっせき)した気持ちにある人が攻撃を行うので、攻撃者は別のマイノリティーグループに属す人の場合もある。イムさんは、個人でできる対処として「周囲の状況に気を配り摩擦を避けること」、そして「どんな小さなことでも報告すること」を挙げるが、そこには、悪口や言葉の暴力も含まれる。
全米がアジア人ヘイトに目を向ける機運の高まりの中、言語の多様性を抱えるロサンゼルスの警察が日本語でメッセージを発信することは日本人と日系のコミュニティーにとっては頼もしくもある。ヘイトに遭遇した場合、事件性がなければ胸の中にしまい、「早く忘れてしまおう」と何事もなかったかのように振る舞いたい気持ちは、誰の中にもあるし、友人に話したりSNSに投稿したりすることで終わってしまう人も多いだろう。だが、動画は「一歩進んで警察にレポートすることが周囲を守ることにつながる」という考えを気付かせる。
アジア人憎悪被害の多くは言葉による暴力だが、フリースピーチのこの国においても「ヘイトスピーチは、どんな場合にも許されない」ということを改めて胸に刻もう。
言葉の暴力を含む相談・報告は、電話877・ASK・LAPD(877・275・5293)。「日本語で」と言えば、日本語でレポートすることも可能。巡回の警察官に出会えたら直接に話しても良い。緊急通報は迷わず911にダイヤルする。
動画の視聴は、YouTubeで「AAPI Hate Crime PSA-Japanese」と検索する。【長井智子】