ロサンゼルスに移って40年以上が経つ。大小さまざま日本ではできない経験もさせてもらい、その度に一喜一憂したのはずいぶん昔のこと。ただその当時は理解できなかったり見えなかったりしたのに、時間の経過とともに納得できたことも、かなりある。
 無い物ねだりをするのは人間の習性なのか、アメリカで住めば日本のことや物が懐かしく感じ、美化しやすい。また反対も同様。この10年くらいの間に、それまではいかにも優れていると思っていた日本の製品の幾つかは、実は環境の違いによるものだと気が付いた。
 たわいのない物だが輪ゴムが日本で使っていた時より頻繁に切れる。またゴムを原材料としてできたパーツがひからびて、交換しなくてはならなくなった機器もあった。粗悪とまでは言いがたいが原材料の品質がいまひとつ日本の水準に達していないのだろうと思っていた。
 たまにしか降らないが、雨が降ると雨漏りがする。昨年修理したが別のところが漏るようになった。これも当初は日本とアメリカの大工さんの腕の差だと信じていた。だがこの二つに関してはかなりの割合で空気の乾燥度の違いによって生じたものだ、と気が付いたのはそれほど昔ではない。
 15年ほど前に日本式の風呂場を新設した。同じ年に日本へ滞在したので、昔なじみの、ヒノキでできた風呂用腰掛けを持ち帰った。それほど高価なものではなかったが釘とか接着剤を使用せず、きっちりと組み合わさったものだ。ロサンゼルスに戻り使用し始めると、脚の部分が縮んだようですっぽり抜けそうなくらい、ぐらぐらしてばらばらになりそうになった。だが、風呂に漬かる前に水をかけると木が膨らみ素手では抜けないほどぴったりして元に戻った。その後同じ状態をくり返しているが問題なく使えている。
 日本の寺院など歴史的建造物の多くは釘を使わず、柱などは木と木を組んでつなぎ支え、地震などの揺れにも柔軟性をもたらしているとのことだが、モハベデザートなどに持ってきたら木材の乾燥で組み合わせた部分に隙き間ができて、建造物がバラバラになってしまうのだろうか。【清水一路】

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