年末の帰国直前のこと。義姉と墓参りに行った帰り、銀座にあるカフェに寄った。混んでいるわけでなく、割合ゆったりとコーヒーと会話を楽しんでいるという雰囲気だった。そこは「銀ブラ」の語源となったカフェだった。
 「ブラジル珈琲(コーヒー)のパウリスタ」から銀座の銀とブラジルのブラを取って「銀ブラ」とした新語で慶応の学生が作りはやらせた言葉だという。これにはもちろんブラジル移民の珈琲豆栽培に入植した歴史がある。
 連日、大谷翔平が地元紙をにぎわせているのにゆっくり読むこともできない。母のアルツハイマー病に振り回され、父が滞在中に急死、母が要介護2に認定され、ヘルパー派遣やデイサービスを受けられるようになった。母が嫌だというのでデイサービスは今のところ受けていないが、ヘルパーは毎日来てくれることになった。介護認定に日数を要すると聞いていたので、帰国前にここまで事が運ぶとは思っていなかった。
 故郷の自然には助けられた。緑豊かな山道、川のせせらぎが聞こえる町中の道を歩いてストレスを解消していた。自然がなかったら気が狂いそうだった。家族を介護した経験がある多くの人たちは、介護者が年寄りを殺したニュースは他人ごとではない。いつ自分があの立場になるかと思った、と家族間での介護の難しさを語る。他人が入ることで、それが幾分緩和される。
 コロナ禍では、在宅でサービスを受けるのはいいが、そこに上京していた家族が帰省してくるとサービスが一時停止になる。コロナウイルスをスタッフが持ち帰らないように、施設内の利用者に影響が出ないようにという配慮からの措置だ。
 「カフェーパウリスタ」でいただいたブラジル珈琲は久しぶりのくつろいだ一服となった。この3カ月のストレスを解かすようだった。ゆっくりして、気持ちに余裕が出てくると、以前に訪れたブラジルの日系移民、コーヒーの積出港であるサントスの風景が思い出された。あの日系移民の忍耐と苦難の珈琲豆が無償で1万2千俵(12年間で)もブラジルから供与されたという歴史を知りありがたいと思った。
 皆さま、ゆっくり一息、よいお年を!【大石克子】

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