映画「The Rescue」を見た。コロナ勃発前の2018年、タイの洞窟で生じた遭難事故は世界中のメディアが注目した。12人のサッカー少年たちと大人のコーチ1人が、豪雨によって浸水した洞窟の中に閉じ込められてしまった…それもかなり奥にである。壮絶な救出劇の舞台裏を描いたドキュメンタリーだ。
 世界中からボランティアも含め多くの救助隊やダイバーたちが集結した。悪天候が続く雨季で、救助は絶望的とも危惧されたが、知恵と力を絞り出し捜索戦略を練った。タイとアメリカの特殊部隊たちは身体的に鍛え抜かれ申し分ないが、この水中洞窟は侮れない。常に死のリスクが伴うため、高度で特殊な専門スキルと経験を要する。日がたつにつれ、安否を気遣う家族たちの悲痛が増す。見ていて本当につらい。
 民間のイギリス人洞窟ダイバー、リック・スタントン(当時56歳)とジョン・ボランセン(47歳)が、9日後、洞窟内4ロ先でついに生存者全員を無事発見。見た目は普通の年配のおじさんたちだが、経験豊富な熟練ダイバーだ。しかし歓喜と安堵も束の間、実際どうやってそこから全員を外まで救出するのか? 酸素レベルが低下し続け、一刻を争うさらなる過酷な難問が待ち受ける…そして驚くべき命懸けの奇策に賭ける…。
 脅威なる自然とのすさまじい闘いと共に、東南アジアの歴史、伝統、習慣、文化の価値観や信念も切実に描写する。不安と恐怖が常時つきまとう緊迫した状況下で、淡々と寡黙に最後まで怯まず完遂しているように見えるダイバーたちだが、内面のセルフダウトを克服する葛藤が垣間見れる。勇気、根気、さらには精神力、集中力、チームワークの真髄がひしひしと伝わるヒューマンスピリットの集大成だ。地元コミュニティーや政府、軍部、世界中からの多大なる奨励とサポートで奇跡を起こす。
 監督は、ロッククライマーの挑戦を描いた「フリーソロ」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー作品賞を受賞したエリザベス・チャイ・バサルヘリィ&ジミー・チン。現在、混沌とする世の中だからこそ、この種の一体化する感動作品は一見の価値がある。【長土居政史】

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。