侵略を受けて一国の大統領が他国の国会で演説をする、これは戦争下にある国にとっては最大の武器だろう。英・加・米・独とすでに何カ国かの国会で行ったゼレンスキー大統領の演説は、各国の支援を引き出す最大の効果を生み、ミサイルや戦車・航空機以上に戦力として効果を発揮する。日本では23日に行われた。
 各国、特にヨーロッパのウクライナ周辺国は、この国が独立を維持し、ロシアとの緩衝地帯として機能してくれることを願っている。過去にドイツ・ヒトラーの侵略の経験が身に付いているからである。
 その希望はロシアも同じだ。ウクライナは小麦やトウモロコシで世界市場の主要地位を占め、原子力発電や各種の武器生産でも主要な地位を占めている。ウクライナを完全な自国支配地にしてヨーロッパとの緩衝地帯の役割を果たさせたい。
 人道上の問題はさておき、各国にとってウクライナは重大な戦略的要地である。
 古来、大戦争は国際社会のバランスを変え、国際社会のあり様を大きく変えてきた。今回の戦争では自由主義陣営の国々が団結してロシアへの強力な経済制裁を課している。だが、長引けば当事国だけでなく世界各国の経済は大変な停滞に陥るだろう。グローバル化した世界経済は各国が食料、各種の原料、資源や技術を頼り合っている。それらのサプライチェーンが変わらざるを得ない。そして人々の考え方が変わるだろう。もはや当事者の両国だけではない。世界が変わるのだ。
 侵攻初期に全ロシア将校団協会が出した声明文・プーチン辞任要求がある。
①国家としてのロシアの存在を危うくする。②ロシア人とウクライナ人を永遠の敵にしてしまう。③ロシアとウクライナの若くて健康な男性が数万人ずつ亡くなる。2014年のクリミア半島奪回作戦はほぼ無傷で戦術的大勝利だったが、戦後、欧米日の制裁でロシアは経済成長が大打撃を受け国民は苦しんだ。
 独裁国が狂気に走る時、止めるのは難しい。近隣のヨーロッパ諸国には、かつて傍観によりヒトラーの侵略を許した悪夢がよみがえる。各国は他人事ではない。決着への良き落とし所があれば良いのだが…。(若尾龍彦)

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。