米国で先月、28年ぶりに銃規制強化法が成立した。超党派で可決にこぎ着け、確実に前進したといえるが、殺傷力の高いライフルの販売を規制する内容などは見送られ、安心できる社会の実現にはまだほど遠い。
銃撃事件のニュースが流れない日はないぐらい、米国では、毎日どこかで尊い命が銃により奪われている。テキサス州ユバルディの小学校で21人が犠牲になった銃乱射事件の衝撃は、1カ月以上たつ今も収まることはない。
子どもたちが、緊急時に死んだふりをしなければならない教育現場など、異常でしかない。この銃乱射事件では、警察の対応の遅れが激しく非難されたが、子どもを守れる銃規制が確立されるまでの緊急対策として、全米の学校の教室に、間違って子どもに当たった場合でも致命的でないテーザー銃などを消火器同様に完備したらどうだろうか。
リベラル王国に住んで30年、すっかりカリフォルニアンになった自分が近年よく考えるのは、銃メーカーの責任について。食品からサルモネラ菌が見つかれば、製造者は商品をリコールし、山火事の原因を作った電力会社は、被害者に損害賠償を支払う。銃が、本来の使用目的に反して乱射事件に使われ、無差別に命が奪われた場合は、銃メーカーが責任を取るのは当たり前ではないだろうか。
銃犯罪が悪化の一途をたどる中、他州に比べ銃規制が厳しいとされるカリフォルニア州では、規制強化に向けた複数の法案が急ピッチで審議されている。その一つが、中絶を禁じるテキサス州法をまねて、ゴーストガンとそのキットを含む違法な銃の製造、販売、運搬に関わった者を個人が訴えることを可能にする内容で、被告には、銃1丁につき少なくとも1万ドルの賠償金支払いが命じられるとしている。その他の法案は、ゴーストガンの部品へのシリアルナンバー刻印を義務付ける、未成年者への銃器類の広告を制限する、といった内容だ。
連邦最高裁が、銃の携帯を制限したニューヨーク州法に違憲判断を下すなど、きな臭さが漂う今、カリフォルニア州には、銃犯罪撲滅をリードしてもらいたい。(平野真紀)