残り1カ月を切り、佳境を迎えた大リーグのレギュラーシーズン。ワールドシリーズ制覇を目指したプレーオフ進出争いは激しさを増し、さらに個人のタイトル争いもおもしろくなってきた。日本人ファンにとって目が離せないのは、ヤンキースのジャッジと、エンゼルスの大谷の一騎打ちとなったア・リーグのMVP争いだ。
 8日時点で、本塁打王争いは首位で55本を打っているジャッジが、2位で33本の大谷を大きくリードしている。ジャッジは、打点の2冠を取る勢いを見せ、本塁打はアの最多記録61本を61年ぶりに破る地元ニューヨーカーの期待を背負い、MVPの筆頭候補に挙げられている。
 大谷は打撃で、ジャッジに大きな差を空けられており、よほど打ちまくらない限り追い抜くのは至難の業だろう。だが、大谷には投打の「二刀流」という武器があり、好投を続ければ逆転の2年連続MVPが見えてくる。
 そのカギを握るのが、シーズンを通してローテーションを守った証の規定投球回数の達成という。今季136回を投げ、自身初の規定の162まであと26。残り登板は4試合か5試合しかないため、簡単なことではない。前回の登板では華氏100度に迫る猛暑の中、8回を投げ投球回数を伸ばした。その翌日は代打でも出場しなかったのは、MVPを狙い、残りの登板に備えて英気を養ったのだろう。
 大谷は今季、ベーブ・ルース以来104年ぶりとなる「2桁勝利&2桁本塁打」を達成。さらに、10勝&30本塁打は史上初で歴史をつくった快挙だが、誰もやったことがなかったためか、さほど騒がれず残念だった。大谷はすでに規定打席はクリアしており、近代野球では初という規定投球回を同時に達成すれば、強いアピールになるのは間違いない。
 日本人ファンにとって、大谷にMVPを取らせたい気持ちはよく分かる。しかし、冷静に見ればジャッジに軍配が上がるだろう。この若い2人は超一流のアスリートであり、かつおとなしくて他人思いで優しく、超一流の性格を持ち合わせている。野球ファンの私としては、数字で示せないこうした人柄の良さも加味して、今季のみ特別ルールとして2人同時受賞が見てみたい。(永田 潤)

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