記念撮影に納まる(左から)ドジャースのヤングCRO、藤内所長、キティー、サンリオ社のマーケティング・ディレクターのデビッド・マーキ氏、阿部副本部長
 ドジャースは1日、ニューヨーク・メッツ戦を控えた試合前のフィールドで、毎年恒例のイベント「ジャパン・ナイト」を行った。今年は日本の観光局がタイトルスポンサーとして参加。場外のイベント広場では東北や北関東地方の観光宣伝ブースが設けられ、来米した関係者が着実に復興に向かいつつある被災地をアピールするとともに、温かい支援を送り続けてくれたロサンゼルスに感謝の気持ちを届けた。
始球式に向け気合いを高める菊地里帆子さん(右)と弟の清史さん
 同イベントは観光庁と日本政府観光局(JNTO)が「東北・北関東インバウンド観光プロモーション」の一環として、同地方の魅力をPRする目的で行われた。
 JNTOロサンゼルス事務所の藤内大輔所長は「東北地方には夏祭りや温泉など、見どころや観光名所がたくさんある。海外の人にぜひ元気になった被災地を見てもらい」と意気込んだ。
 ロサンゼルスからはこれまでに多大なる支援の手が日本に差し伸べられてきた。また同球団は野茂英雄や黒田博樹をはじめ日本人選手が活躍し日本とは縁が深く、震災直後から義援金集めのキャンペーンを実施するなど、被災地支援にも協力。こうしたことから今回のPR会場に同球場が選ばれた。
 東北観光推進機構の阿部昌孝副本部長は「米国からは義援金だけでなく励ましのメッセージもたくさん頂いた。今日のイベントにはその感謝の思いを込めたい」と語った。
 ドジャースのマイケル・ヤングCRO(Chief Revenue Officer)は「復興支援、さらには東北・北関東地方の観光促進にも貢献できればうれしい」と述べた。
仙台の伝統芸能「すずめ踊り」を披露するダンサーたち
 海外でも人気のある日本のハロー・キティーが「一日観光親善大使」に任命され、試合前のイベントではキティーと一緒に写真が撮れる機会が設けられたほか、来場者にはキティーの首振り人形も配られた。また約3000本のカーネーションの花びらと色砂を使って描かれた着物姿のキティーと青森県のねぶたの色鮮やかなフラワーアートも展示された。
 この日の試合は満員御礼。セレモニーはオレンジ郡仏教会の「大音太鼓」の力強い演奏で幕を開け、音頭に合わせおよそ100人の神輿行列が登場し会場を盛り上げた。宮城県からやってきたダンサーが仙台の「すずめ踊り」を披露すると、その迫力ある舞は元気を取り戻しつつある被災地をそのまま表しているかのような熱気を帯び、観客からは大きな拍手が巻き起こった。
 始球式はキティーのほか、実際に被災した仙台二華中学校1年生の菊地里帆子さんと弟の清史さんが大役を務めた。震災時、里帆子さんは家も人もすべてが津波にのみ込まれていくのを目撃し、目の前で起こっている恐ろしい光景に、「何もできない自分にみじめさを感じた」という。ある日、支援物資として文具が届き、「米国をはじめ世界各国が応援してくれている」と肌で感じた里帆子さんは、再び勉強できる喜びを知った。
 「国際公務員になってユネスコで働き、世界中の子どもたちに勉強のできる環境を作っていきたい」。震災後に芽生えた新たな夢。「今まで支援してくれたことへの感謝の気持ちをボールに込めたい」。その思いを胸に菊地さんは一球を投じた。
 さらにイベントには新美潤・在ロサンゼルス日本総領事、マーク・ナカガワ二世週祭実行委員長のほか、エリカ・オルセン同祭女王とコートらも参加。国歌斉唱は日本人の母をもつ日系人歌手ジュディス・ヒルさんが務めた。
 連敗のドジャースだったが、逆境にもめげず再び立ち上がろうとする被災地の力強い思いがチームにも届いたのだろうか。この日の試合は逆転勝利を収めた。【吉田純子、写真も】

観客からの歓声に応える新美総領事(左から順に)、ナカガワ二世週祭実行委員長、エリカ・オルセン同祭女王とコートら

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