民衆に人気があったキリストを捕らえるため、エルサレムの祭司や律法学者らは一計をめぐらす。「税金をローマに納めるべきか、否か?」とイエスに質した。
 当時ユダヤはローマ人の支配下にあったから、「税金を納める必要なし」と答えれば反逆罪として捕らえ、「税金を納めるべき」と答えれば独立を願うユダヤ民衆とイエスを離反させられると考えたのだ。
 言質を取って、捕らえる口実にしようとしている狙いを察知したイエスは、「貨幣の肖像は誰になっているのか?」と逆に質問し、「ローマ皇帝カエサル(シーザー)の像です」との答えを誘導。「それでは、それはカエサルのものだからカエサルに返したらよいだろう」と巧妙に答えて難を逃れている。
 「カエサルのものはカエサルに…」との名解釈のように、人はローマ時代の昔から、納税の義務から逃れられない。この世で確かなものは、死と税金だけともいう。おりしも、2012年度の納税申告(タックスリターン)締め切り日が来週の15日に迫っている。人は、税金対策に青息吐息。
 手元の資料によると、今年は4月18日が「タックス・フリーダムデー」になる。つまり計算上は、1月1日から4月17日までの総所得はすべて納税分で、18日以降の収入が、自由に使える可処分所得になる。あと1週間は、税金のためにがんばって働くしかない?!
 もっとも、連邦税はともかく、州によって税制税率が異なるので、タックス・フリーダムデーも州によって異なる。最も早い州はミシシッピー州とルイジアナ州の3月29日。遅い州はコネティカット州の5月13日。カリフォルニア州は4月24日で、遅いほうから6番目だ。
 また、課税率の全米平均は総収入の29・4%になる。これが高いと感じるかどうか—、半数以上が高いと感じている。それは、なぜか。苦労して納めた税金が無駄に使われているとの不信感を納税者は常に抱いているためだろう。
 税金は市民生活を送るうえで必要不可欠だと理解していても、無駄に使われているとしたら、カエサル(政府)にタックスリターンを要求しなければならない。【石原 嵩】

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