日本では4月29日は「昭和の日(国民の祝日)」だ。「国民の祝日に関する法律」によると、「昭和の日とは激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」とある。昭和天皇崩御の後、それまで天皇誕生日であった日を「緑の日」を経て2007年より「昭和の日」とした。
 俳人、中村草田男の有名な句に『降る雪や 明治は遠く なりにけり』というのがある。この句は昭和6年に大学生だった草田男が詠んだものだそうで、明治が終わって20年ほどで詠まれたことになる。
 今年は昭和が終わってすでに平成25年目であり、「昭和は遠くなりにけり」になったといえよう。
 昭和39年に開催された東京オリンピックに日本中が盛り上がり、その後この開会式が行われた10月10日が「体育の日」として祝日に指定された(現在は10月第2月曜日)が、今ではその指定経緯も忘れられがちだ。
 私を含め、戦後の教育と躾(しつけ)を受けた多くの日本人は、個人の権利や自由は主張できても、社会人としての道徳・倫理について、どれだけ身につけているか疑わしい光景をしばしば目にする。さらに社会性についての認識はあっても国民としての国家観には欠けているところが大ありだ。
 なぜなら、私もそうだったが、学校では日本国憲法にある国民の三大義務(納税、勤労、教育)は教わっても、国を護ることについては何も教わらなかった。
 そんな国民から生まれた子どもたちが平成の世の中を形成している。自分の意のままにならないとすぐキレてしまう若者が増加し、それが学級崩壊や不登校などにつながり、その上、社会秩序を身をもって示すべき家庭内が乱れ、親が学校にモンスターペアレントとして必要以上に無理難題を突きつける時代なのだ。個人の権利・自由も結構だが、その大前提として日本国民は国家と社会秩序を保つ義務があることを身につけるべきだろう。
 昭和の日をただ単に「激動の日々を経て…」と定義するだけでなく、加えて「国民一人ひとりが国家と社会のために何ができるかを考える日」とつけ加えたらどうだろうか。【河合将介】

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