ロサンゼルスに住むひとりの女性が、盲目のペットに希望の光を照らした。
 14歳のトイプードル、マフィンはいつも背中に天使の羽を付けている。真っ白な体に天使の羽はよく似合う。老犬でヨチヨチ歩きのマフィンは天使の羽を片時も離すことはない。なぜならこの羽を付けていないと歩くことすらままならないのだ。
 実はマフィンは目が見えない。3年前にガンを患い視力を失った。薄れゆく視界の中で必死に前に進もうとしたが、障害物にぶつかり壁が立ちはだかる。ある時、自宅の階段から転落しけがを負う事故も起きた。それ以降、外出はおろか家の中で歩くことも恐れ、おとなしくしていることが多くなった。
 いつもマフィンを見ていた飼い主のシルビー・ボルドーさんはいたたまれなかった。「もっと自由に歩かせてあげたい。たとえ目が見えなくても怯えずに毎日を過ごせる方法はないものか」。考え抜いた末にうまれたのが天使の羽だった。
 この天使の羽には背中に装着された羽の部分から頭を取り囲むようにして銅製の保護リングが取り付けられている。このリングのおかげで家具などにぶつかってもリングにあたるため、マフィンの顔はしっかりと守られる仕組みになっている。
 ボルドーさんはさらに、目が見えず介護を必要とするペットが世界中に数多くいることを知る。そこで非営利団体を設立し、天使の羽がついたこの保護リングを「マフィンズ・ヘイロー(Muffin’s Halo)」と名付け特許申請した。「ヘイロー」とは「天使の輪」の意味をもつ。頭の回りを囲う保護リングはまるで天使の輪のよう。ペットも高齢になるにつれ白内障や糖尿病を患い目が見えなくなるケースが多いだけでなく、最近では暴力や、食事を十分に与えてもらえないなど虐待を受け失明し、シェルターに送り込まれる犬も少なくない。
 光を失った愛犬に作った天使の輪が、今や障害をもつ世界中のペットたちを助け、希望を与えている。ボルドーさんのもとには今ではロサンゼルスだけでなく、世界各地から手紙が届けられているという。【吉田純子】

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